第1話 余計な利益

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「それは大丈夫。もしそうだとしたら、証拠がなくて当人の記憶でしか解決はみられないから、私たちには手伝えることがないし」  こういうこともよくある。  実際どうなのかが問題なのではなく、千鶴さんの守備範囲外になるようであれば、そこはもう追求する余地はなくなるのだ。 「もちろん、スタッフ自身が損をしている場合は、さすがに申告し忘れることはないだろう、という読みもあるけど。今回はお店のお金が増えているわけだから、裏を返せば、スタッフの誰かが損をしている可能性があるわけで」  確かに。  僕も事務所の備品を買うときに立て替えるときはたまにあるけど、それを経費に計上しないで自費で賄うことはまずしない。  アルバイトのみなさんだって、稼ぎは一円でも多いほうがいいに決まっている。  こういうこともちゃんと考えているのだから、手に負えない部分は完全に無視するわけじゃないというのも、千鶴さんのいいところだと、僕は勝手に思っている。  なんていうか、そんな無責任なことはしないのだ。 「そんなわけで、売上金も支出もミスはない。これはもう確定ということにする」
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