第1話 余計な利益

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「うん、学生ならきっと、それが一般的だと思う。人によっては完全に無頓着で、お給料が入ればそれでいいくらいに思っている人だっているかもしれない。逆に、ここのお仕事で生計を立てているなら、かなり正確に計算している人もいるでしょうね」 「ということは、お給料がちょっと少なかったとしても、必ずしも誰もがそれに気づくとは限らないってことですね」 「そういうことだね。じゃあ、生計を立てるくらいたくさん働いている人が怪しいかっていうと、そんなこともないと思うの」  今度は黙ることにした。そうなんですか?って聞くしかできないから。  僕も真相に辿り着きたいし、千鶴さんの役に立ちたいと思う気持ちはあるけれど、それ以上に、千鶴さんのひとりごとを妨げるようなことはしたくないという気持ちのほうが強い。 「あの勤務記録のシステムだったら、そうそうミスは起こらない。事前の予定通りならもちろん、イレギュラーがあったって、店長が把握していないものは承認されないのだから。ましてや、スタッフのお給料の総量が減るなんてことは考えられない」
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