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第1話 余計な利益
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「蓮くん、今から私、ひとりごとを言いますので、何か変なところがあったら止めてください」
「了解です。どうぞ、ごゆっくり」
このひとりごとが始まったら、それはもう事件解決の合図だ。とは言っても、たいていの場合、僕は全然わかっていないのだけど。
それでも、僕の突っ込みが千鶴さんにとって金言になることが多いらしく、僕はこうして千鶴さんの隣にいさせてもらっている。
「みなさんのお話からして、答案はこの二階の事務スペースのどこかに必ずある」
特に問題がないとき、僕は何も言わない。下手に相槌を打つとうるさいと叱られるからだ。
「普段は採点がされていないものとそうでないものでは、保管場所を分けていた」
「あと、塾生かそうでないかでも分けている、とも言ってました」
何が引き金になるかわからないので、僕は僕で思ったことを口にする。空振りだった場合、千鶴さんもスルーだ。
「職員の方々も、ありそうなところはしらみつぶし探してみたけど、全然見つからない」
「………」
「ということは、誰も答案をしまっていないということになる」
「え、どういうことですか?」
質問は認められている。僕は、千鶴さんの話の飛躍具合になかなかついていくことができないから、この質問は特に多い。
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