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そんな思いを込めて、先ほど類が読んでいた新聞につと律は目を遣った。そのついでに満足げに頷く美青年の表情がちらりと視界に入る。
「うんうん、大正解」
「……あの、類さん。それはともかく」
「うん?」
「何でしょうか、その生暖かい微笑みは」
律が恐る恐る問いかけると、類は更に頬を緩めて立ち上がった。
「いや、流石は私だと思ってね」
「はい?」
突然類の口から飛び出た自画自賛の言葉に、律は戸惑って二、三度瞬きをした。類は顎に手を当てながら律へと歩を詰め、その服装を上から下までざっと眺めてから満足げに頷く。
「やっぱり君にはそれが似合ってる」
「あ、着物のことですか」
律は自分の着ている着物を見下ろす。慣れない格好をしているからかどことなく不安にかられ、律は意味もなくぱたぱたと着物の表面をはらった。
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