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彼が三人の若い女性を『お嬢様』と称したのは、文字通りの意味だ。
三人とも、歳は律と同じ十代半ばごろか。光を穏やかに反射するその長い黒髪を流行りの洋風の髪形に結い上げ、仕立ての良い上品な色の着物を着ている。
どこからどう見ても『良い家』のお嬢様方だった。
「前に噂を伺った時から来てみたかったんですの! 素敵な場所ですわね」
「こんな素敵なお嬢様方のお褒めに預かり、光栄です」
類がその端正な顔で微笑みながら答えると、お嬢様方は息をひそめてその場に固まった。心なしか、彼女たちが類へ向ける視線は少し熱を帯びている。
「あの、足もお疲れでしょうしどうぞこちらへ」
類の後ろ側から進み出て律が手で部屋の中を指し示すと、途端に三人分の視線が律の全身に突き刺さった。
「……小早川様」
「律様」
口々にそう言いながら、彼女たちは真剣な目で律ににじり寄る。そのただならぬ視線に圧され、律は後ろへじりっと後ずさった。
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