4(ボスside)

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4(ボスside)

 椅子代わりに使っていた段ボール箱から腰を上げ、踵を返す。数歩先に人の気配を感じて顔を上げると、正面から歩いてくるハチと目が合った。 「あ、ボス。俺これから昼飯買ってこようと思うんすけど……」  言いながら、小走りで駆け寄ってくる。その足を制すように、俺は片手を胸の前に掲げた。 「……どっか、行くんすか」  何かを察したように、ハチはゴクリと唾を呑んだ。忠犬はよく鼻が利く。探るようなハチの目を、俺は真正面から見据えた。 「ああ。そろそろ頃合いかと思って」 「……あんた一人で行くんすか」  語尾が震える。声のみではない。身体の横で強く握った拳も、小刻みに震えている。野良犬のような鋭い眼光に、しかし俺はふっと頬を緩めた。 「俺一人じゃない。ハチ、お前にしか出来ないことだ。頼めるか?」  ハチの瞳が、分かりやすく光を取り戻す。その肩に手を置いて、俺は言い聞かせるように続けた。 「いいか。13時になったら、警官が一人コンビニに昼飯を買いにくるはずだ。その時、お前は中には入らず外から様子を窺え。そして、買い物を終えた警官が店を出てきたら、どうにかしてそいつをここまで連れてこい」 「ここまで……?」  爛々としていた瞳の奥に、戸惑いの色が走る。 「でも、そんなことしたらこの拠点が警察にバレやしません?」 「大丈夫だ。その後は俺が何とかする。お前は、そいつをここまで連れてきてくれさえすればいい。分かったか?」  少しの間、沈黙が続く。何を考えているのか、ハチは俺の左右の目を交互に見比べていたが、しばらくして意を決したように頷いた。 「聞きたいことは色々あるっすけど……」  犬らしくもなく、クシャッと顔を歪ませて笑った。 「任せてください。俺ら、あんたのこと信頼してるんで」
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