一 綺麗な小瓶

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 今日は平日で、パート先にはお客さんは少なかったけれど、それでも家から一歩外に出て働くって事は本当にしんどい。さすが、アラサーだか、アラフォーだか分からなくなる30代どんずまりのお歳頃だわ、なんて生きてきた時間の速さにいつもながら残念なため息しかでない。  なぁんてことを、だらだらと考えながら家路を急ぐんだけど、このクタビレた身体を引きずった帰り道にいっつも思うのは、浅草界隈だけじゃなくて、それこそ私も昔に戻れたらどんなにいいかってこと。 まあ、でも旦那様の了士(さとし)さんにそんな愚痴を聞かれようものなら呆れ顔で『またか』と言われ兼ねないから心の中だけに仕舞うことにしているんだ。 ――うわあ!―― 自分でも聞いたことのない叫び声を出すほど驚いて両手で頭を抱え込んだ。 頭上から不意に襲われた気がしたけどカラスなにか、大きい鳥だろうか。辺りを見渡したが何事もない光景にホッとして再び歩き出すことにした。
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