一 綺麗な小瓶

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「あら、お客様……えっと、平……様ですよね? 私、白美クリーニングの……立てますか?」 ひと目で見覚えのある顔だと分かって手を差し出すと、払いのけるかのようにふらふらと老人が身体を泳がせると「ああ、大丈夫じゃ」と歌うように言いってステッキに捕まりながら立ち上がった。 「救急車を呼びましょうか? 痛いところはないですか、お怪我は……」 「いやいや、ワシは不死身ですのじゃ」 「え?まあ。お互い寄る年波には抗えないですよ、ああ無理しないで」 「ワシは時間が戻せる」 遮るようにそう言い放ち、顎を突き出して自慢げにこちらの眼差しに入るように老人が見上げている。 (――わあ、呆れたわ) どうしたものかとその老人の顔を眺めていて矢庭に思い出した。 「――はいはい、大丈夫なら良かった。そうそう、お預かりした上着のポケットに忘れ物がありましたよ、チェーン付きの小瓶。お電話したんですけど……」 「そうかいの。それはあんたに預けようと思っとった」
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