利用者により対応が違う職員

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利用者により対応が違う職員

 角は注意できそうな利用者に対しては、鬼の首を取ったように注意をしまくる。なのに島田は完全見て見ぬふり、野放しだ。  しかし優しい利用者や気さくな利用者、大人しい利用者にはまるで『職権乱用の教師』の如く『生徒をいじめて楽しむ教師』の如く注意をする。冷徹な口調で冷たい眼をして淡々とするので、そこが却って不愉快極まりない。  特に、よくしゃべりよく大笑いをする火村さんに対しては、 「火村さーん、うるさいですよー」 「火村さーん、静かにしましょうねー」 「はーい、火村さーん、そんなことしちゃ、いけませんよー」  なんて注意をし、それこそ 「ちょっと……というかいくら何でもそこで注意することないんじゃね?」  レベルな注意を、角は火村さんにしていたのだ。  ちなみに他の職員が火村さんに注意したり小言言うのは見たことがないが。  というか傍から見ているとかなり異常だったし、あれは差別…というよりもいじめ…いや、双方の立場を客観的に見て捉えてみると、利用者の性格否定、権力をなくすような行為であり、ハラスメント的行為であり。  更に過激な言い方をしてしまうと、虐待になるのではないか?と何度も思った。  仮に角にそれに対して咎めたところで、 「注意が必要だからしているだけです」  と言い訳するだろうが、火村さんに対しては明らかにやりすぎだし、なんだか火村さんに注意することで悦に浸っているようにすら思えた。 「私は20代半ばなのに、30代の火村さんにこれだけ注意をできる、えらい立場にいるのよ?すごいでしょ」  的な圧力や自己陶酔感を感じてぞっとした。
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