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辞めないで…
カラオケプログラムは、カラオケボックスに行って歌うことをしていたが、こちらも長らく参加していなかった。島田が毎回参加していたからだ。
そもそも私は「嫌いな人の前で歌を歌えない」のだ。小学校時代、「担任の陰謀により、場面緘黙症なのに皆の前で泣きながら歌わされた」というトラウマがあるのと、その際、男子に歌い方をからかわれたトラウマがあるからだ。なので特に、心を許していない男子の前では歌えない。
そんな中。衝撃的な事実を知った。
素敵な職員の上原さんが辞めてしまうという報告だ。
「僕じつは、今月いっぱいでやめるんですよ」
そういえばその月から、東さんという新人の男性職員が来てくれている。
これはただの従業員数補充ではなく、上原さんの後任だったということか…!!!
事業所内はざわついた。
「上原ロスが起きるよ…俺もここ、やめようかな」
上原さんがきっかけでこの事業所に入ったという本多さんは、こんなことを呟いていた。
上原さんが最後の日は送別会をしようという話になった。
そして氷川さんという皆のお母さん的な女性利用者が、
「皆で上原さんに色紙を書いて渡しましょう」
と提案し、自腹で色紙を買って持ってきてくれたので、皆で寄せ書きをした。
上原さんの送別会。最後に皆で上原さんと握手をして事業所を出るという形になった。
事業所を出てから2名の女性が号泣しており、氷川さんが慰めてくれていた。
これからこの事業所、上原さん辞めちゃって大丈夫なのかな?と私はなぜか漠然とした不安を感じていた。
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