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「それから5年後、2人はめでたく結婚しましたとさ…なんて。」
あはは、と乾いた笑いで届けられたビールを煽る。さっきよりも幾分か苦くなった炭酸が喉を刺激しながら流れていく。黙って相槌を打っていた雅人はちょっと考えたあとため息を吐き、
「はたから見たらめちゃくちゃ仲良かったのに、そんな重いこと考えてたわけ?びっくりなんだけど。」
「うるさい。辛かったんだからね。だんだん美里との会話が大樹についての話題ばっかりになるし、大樹は大樹で美里とのことを相談しに来るし。泣きたかったわ。」
「超頼られてるじゃん。」
冷静に突っ込むが、笹乃はそうだけどそうじゃねー!とぐずる。しかし雅人は何が違うのかというように首をかしげる。
「そうじゃん。要するにさーさんは2人の1番でいられなくなるのが嫌だったんでしょ?それなら心配しなくても1番だよ。結婚したといってもお互いに言えないことはあると思うし、その時1番に頼れるのはさーさんでしょ。今までと形が変わるだけで、これからも1番の親友はさーさんなんじゃない。」
すると笹乃はぴたりとぐずるのをやめ、あれ?そうなのか?でも、あれ?と考え始める。今までの形にこだわりすぎるあまり、その可能性に気づかなかった。
「…そう、かも?私、変わらず1番?2人にとって、1番?」
「そうなんじゃないの。」
雅人が適当に返すと、そっかぁ~~と脱力する。気づいてしまえばどうということはない。私は変わらず2人の1番だ。
「じゃ、さーさんの隠し事はどうにかなったわけだし、そろそろお開きに…」
「待った」
そそくさと逃げようと腰を上げた雅人の腕を笹乃の細い腕が掴む。
「え、何」
「せっかくだし他の隠し事も暴露する。どうせ明日には記憶なしよ、付き合え」
「えぇえええ……」
はい、と席に座らされ、瓶でビールを頼まれる。どれだけ飲むのか。ため息を吐きつつ雅人は明日の二日酔いを覚悟した。しかしそれもまぁ悪くないだろうと思う。
雅人にだって隠し事はある。例えば、5年片想いし続けた相手ともっと話したかったがためにわざと酔っぱらいの相手をしたこととか。それを今暴露するつもりはないが、酔ってしまうと何を言ってしまうかわからない。セーブして飲むか、と決意し、2人は2回目の乾杯をした。
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