1番の親友の隠し事

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 はじめにそれに気づいたのは、高校を卒業するときだった。  私と美里と大樹は中学からの親友で、暇さえあればつるんでいた。もともとは私と美里、私と大樹が仲がよく、それが合体してその形になったという形だった。  ずるずると、しかし面白おかしく過ごした高校時代の最後。ふと隣を歩く美里をみると、前を歩く大樹をぼうっと見つめていた。その後他の友達に呼ばれた美里が離れると、友達と写真を撮っていた大樹が帰ってきて、私にこっそり聞いてきた。  「な、美里って今気になる奴いんのかな。」  こんなにタイミングよく両片想いを知る機会なんてあるだろうか。その場はとぼけて終わらせたが、心臓はばくばくと嫌な音を立て、さっきまで卒業でふわふわとしていた気分はぺしゃりと潰れてしまった。  大樹の表情や声音をみるに、大樹は美里が好きだ。そしてそれは多分、美里も。両思いだ。めでたい。きっとあの2人は誰よりもお似合いだ。  そう思うのに、帰路に着いた私の目からはぼろぼろと涙が溢れて止まらなかった。  いやだ。大樹は私の親友だ。男子と女子という壁を超えて1番に仲が良かったし、何をするにも一緒だったのに。  いやだ。美里は私の親友だ。美里と誰より仲が良い自信があるし、きっと美里にとっても私が1番の親友だという自負がある。    2人とも私の1番なのに。2人の1番は私だったのに。2人が付き合ったら、きっとお互いが1番になってしまう。私が1番好きな人たちに、1番好きな人を盗られてしまう。そうなったら、きっと今まで通りの3人組ではいられなくなる。2人と1人になってしまう。  想像するとそれはとても寂しい。寂しくて寂しくて、どうしたら良いのかとさえ思う。  でも、同時にこうも思う。1番の親友なのだから、幸せになってほしい。もし2人が付き合うというのなら、誰より祝福するべきだと。親友なら、親友の恋路を邪魔することなんてするはずがないと。  「……頑張ろう。」  1人決意する。寂しいということも、付き合ってほしくないということも隠して、今まで通りに接しよう。2人が付き合いたいというのなら、全力で仲人をしよう。きっとそれが、何よりも親友らしいと。
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