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テーブルの下で握る掌は、力を込めなければ震えてしまいそうだ。
出来ることなら、このまま逃げ出してしまいたい。
けれど、パズルを完成させるためには 探し当てねばならないピースが有りすぎる。
自分を変える
自分の人生は自分で決める
そう決意させてくれたのは、他の誰でもない、神尾さんなのだ。
鬱屈とした日々に手を差し伸べてくれた、愛しい人。
…だまされてもいい…
それでも構わないと、その手を掴んだのは私。
泰輝さんの言うことが、正しいかどうかなんて わからない。
それこそ騙されているのかもしれない。
でももし
全ての辻褄が合ってしまったら、間違いなく"絵"は綺麗に完成する。
「…主人が、貴方たちのお父様を殺したって、どういう意味でしょうか」
震えだした唇を、きっと悟られている。
「貴方が知っていることを全部、教えていただけませんか?」
私が弱い人間であることくらい、見抜かれている。
少しの沈黙の後、泰輝さんの、そのルビー色の瞳が揺らいだ。
「……本当に、何もご存知ないんですね」
そんな言葉が、溜め息と共にゆっくりと吐き出された。
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