494人が本棚に入れています
本棚に追加
「あいつのことだ、どうせ自分たちなりの計画を実行する気なんだろうけど」
憎々しそうに呟く泰輝さんが、ひどく幼く見えた。
「…どうしてご兄弟なのに、苗字が違うんですか?」
「ああ…父が死んで 僕は父方、兄は母方の親戚に引き取られました。だからです」
「…そうだったんですか…」
「言いましたよね?椎葉のせいで、全部めちゃくちゃになったんですよ。子どもの頃のことを思い出したくもないくらいに」
「…」
「兄とはどうやって知り合いました?」
怒りを孕んだ紅い瞳が、私に向けられる。
私と彼の関係を…この人はわかって聞いているの?
「…神尾さんは、息子の家庭教師です」
「へぇ。あいつ、僕には偉そうなこと言いながら やってることは同じなんだ」
泰輝さんは、嘲るような笑い声を出した。
「同じ、というのは」
「兄も計画的に椎葉に近づいたんですよ。復讐のために」
それは、バラバラなパズルのピースを 一つ一つ繋げていく工程に似ていた。
感情を剥き出して違うピースをはめたところで、絶対にパズルは完成しない。
丁寧に 確実に
例え胸が張り裂けそうになっても。
全てのピースが揃ったら、どんな"絵"が待っているのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!