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「ゆうくん、みかん食べるかえ?」
おばあちゃんのスローな口調に、頭がはっきりした。振り向けば、おばあちゃんが僕にみかんを差し出している。僕が思うよりも大きなみかんだ。
何だか断るのも申し訳ないので、あまりお腹も空いていないがもらった。
「うん、ありがとう」
「そうかえ、そうかえ。熱出しとるときはなァ、こうゆう口当たりがええやつがやさしいもんねェ」
昔が色濃く残る話し方に、少々くらっとした。昔の話し方は訛り過ぎてよく分からない。
受け取ったみかんは、手の平に乗せるとその大きさがさらに際立った。皮はぱさぱさで、美味しい中身の実と隙間が空いていてダボダボだった。
皮をタコの足のように剥いて、実を半分に分けた。シュッと音を立て、露が二三滴滴り落ちる。その露は、立体的でべちゃりと皮に吸収されることなく居座った。
まるで、希望に満ちた明日を見据えているようだ。明日の成分など、ほとんどが絶望であることも知らずに。
さらに一つに分けたみずみずしい実を口に放り込んだ。
もちろん、
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