魔物と経験値と動物

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魔物と経験値と動物

 周りを見渡せば、プレイヤーとNPCを区別するマークが頭上に表示されている事に気付いた。  手動作でメニューを表示して、大学の友達のプレイヤーネームを検索してみると、残念ながらログインしておらず消灯していた。  念のためメールで私がゲームを始めている旨を書いて送った。  街中を歩いて散策してみると、プレイヤーはちらほらいて、屋台にいる大人や広場ではしゃいでいる子供達はNPCだった。  特に買いたい物がなかったので街の外に出た。NPCの門番は私を一別したが、特に何も言わなかった。  草原を歩いていると、魔物と思わしき物体が此処彼処で跳ねていた。所謂スライムだろう。  魔法スキルを使用して攻撃してみると、一撃で倒せた。ドロップは無かった。必ずしも何かを落とすわけではない様だ。  何度か魔法スキルで魔物を倒していたら、突然ファンファーレが鳴った。どうやら経験値が溜まってレベルアップしたみたいだ。  めぼしい魔物が居なくなったので、森の方に足を向けた。森の中は草原に比べて薄明かりで遠くが見渡せなくなっていた。  暫く進むと開けた場所に出て、木漏れ日が暖かな腰の高さまで成長した草と盛り上がった岩肌が其処には有った。  そして、その岩肌の上で呑気に眠っている動物が居た。熊よりは小さいが、犬よりも大きなそれはなんと言う動物なのか。  鑑定スキルがないので正体不明だが、魔物ではないと思う。ライフゲージが無いからだ。  ふと、田舎で飼っていた愛犬を思い出した。小さい頃に飼っていた為、高校生になる頃に寿命で亡くなっていた。  草を掻き分けて近付いてみるが、未だに寝ていて起きる気配はない。野生の動物なのに随分と警戒心が無いな。  岩肌を登り、目当ての動物を間近で見つめる。毛並みは柔らかそうで、抱き心地が良さそうだ。  そう言えばゲームの中で眠る事は出来るのだろうか。ふかふかな枕代わりのふくよかなお腹が目の前に有る。  試しに横になってみた。暖かな陽射しと規則的に動く枕、いやさお腹が私を眠りへと誘う。目蓋を閉じて幾ばくか、頭の下の動きが変化した。  目を開けて横を向くと、私を見つめる動物の眼が何で自分のお腹の上に居るのさ? と訴えている様だった。 「おはようございます」 「ばう」  さっさと頭をどけろと言わんばかりのジト目を向けてきた。無理矢理どかそうとしない辺り、以外に優しいところが有る様で。  さて、どうしようか。1どく、2寝る、3もふる。  3もふる。寝たままの姿勢で首もとを撫で回す。うむ、モフモフですなぁ。
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