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支部に戻ってからもずっと、呆けたように座ったままのサンライズが気になって、ボビーは彼のデスク脇に寄ってみた。
「だいじょうぶですか? リーダー」
「うん」
座り方からして、少しもだいじょうぶそうではない。
席にもどると、シヴァが心配そうにつついてきた。
「リーダー、元気ないよ」
「分かってるわ」
「キサラギ、呼んでこようか」
とうとうシヴァにも呼び捨てにされているキサラギ・ユウスケだった。
「いいわよ、必要ない」
少し様子をみていたが、やはり、動きがない。
ボビーは声に出ないようにため息をひとつ。
そしてまた書類に向かった。
シヴァはひとりで、作戦課に行ってみた。
「シヴァちゃん」
メイさんが半分立ち上がって手を振る。
「やっぱり作戦課に戻ってきてくれたんだにゃ」
「キサラギ、見に来た」
「なあんだ」
メイさんは座りなおして、また作業に没頭した。
キサラギの机の上に、大きなメモが貼ってあった。
『作戦課キサラギ・ユウスケは、只今26日まで有給休暇消化中です
捜さないでください。一応新婚旅行中』
シヴァ、ちっ、と舌打ちする。肝心な時に居ない。
だれかがイタズラで、脇にマジックで書き足してあった。
『御用の方は、モルディブ・ミリヒ・アイランド・リゾートへ』
電話番号まで添えてあった。
一応、メモに控えたが急に馬鹿らしくなってカフェテリアに向かう。
その途中、総務部庶務課に立ち寄って、作業用CDを数枚とデッキの貸出願いを出した。
「BGMに使う? どんなのがいい?」
「何でも。静かな感じで何枚かとりつくろって」
「みつくろう、だよ、シヴァちゃん」
「なんでもいい、みっつクロウして」
「苦労は一つで十分だよ」
申込者欄に、サンライズの名を入れて、自分はさっさと珈琲を飲みに出かけた。
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