終 マドンナ

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 総務の誰かが、特務課のサンライズのところまで 「作業用BGM持って来たよ」  と小さなCDラジカセを提げてやってきた。 「サンちゃんか? 珍しいねえ、はい」 「え?」  怪訝そうな表情を浮かべ、それでもボビーから 「聴いてみれば」  と言われ、特に文句も言わずに手渡されたCDを一枚、全然選ぶこともなく取り出してカセットにかけた。  耳にイヤホンを突っ込んだのに、斜め隣の席にいるボビーにも、流れる曲が聴こえてきた。  ボビーがのぞいてみると、サンライズはイヤホンの元を挿し忘れている。  それにも気づいていないようだ。 「リーダー」  何度か呼んで、ようやく向こうが気づいた。 「待って、リーダー」  ボビーは、曲をふと耳にとめて身をおこした。 「ギター? ステキね、『アラハンブラの想い出』だわ、他には?」  答えないので、自分でCDジャケットを見に行く。全部イタリア語だった。 「これかな……『聖母の御子』というのもあるのね。ほらイタリア語で……」 「……イタリア語は、もうたくさんだ」  サンライズがスイッチを切ろうとしたのであわてて止めさせた。 「聴きましょうよ、曲」  静かな曲の中、ボビーは彼の脇に椅子を置いて、ひっそりと座った。  今ここでちゃんと聴いておかないと、この人はずっと抱えてしまうだろう。  ボビーは静かに、彼に問う。   「リーダー、彼女のことが忘れられないのね?」  これにも、答えがなかった。  ふとボビー、彼がファイルの間に隠すように挟んでいた写真をみつけた。  そればかり眺めていたようだった。 「見せてくれる?」  しぶしぶ、というように彼は写真を手渡した。
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