3人が本棚に入れています
本棚に追加
竹子は強い。腕が、性格が、言葉が強い。
竹子は美しい娘だ。人々は会津一だと誉めそやす。そして同時に眉を顰めもする。
薙刀の腕は免許皆伝。性格は男勝りで何事もはっきりものを言う。
かつて竹子の水浴びを覗きにきた不届き者を、彼女は単衣姿で飛び出し、愛刀で薙ぎ払ったことがある。試合では相手が男でも滅多に負けない。だが、打ち負かされた男たちは竹子を嘲笑する。
「誰があんな男女の水浴びを覗くものか。ちと揶揄ってやろうとしたのを、向こうが勘違いしたのよ」
「女が相手ゆえ、手加減をしてやっただけのこと」
「あのような娘、嫁の貰い手にも難儀しようなぁ」
竹子にはわからない。なぜ彼らは己の弱さを認めず、さも自分たちのほうが正しいのだと声高に言えるのか。さらには女たちまでも竹子を諫めるのだ――女らしく淑やかに。お転婆もほどほどに、と。
会津は武を重んじる藩ではないのか。幕府のため、その忠義を尽くして強く在ることが求められているのではなかったのか。だが人は、竹子が強くなればなるほど彼女を嗤うのである。
最初のコメントを投稿しよう!