主砲の矜持

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清武は今年で35歳。 しかも去年まで8年連続セリーグのホームラン王。 ということは、私が水道橋ドームに通い始めた9年前からずっと、ホームラン王を取っていることになる。 まさにキング・オブ・キング。 王の中の王。 大切なことなので二度言いました。 でも最近、清武の評判は、あまりよろしくない。 かつて日本シリーズを制したことのある名将が、数年前にセリーグに新規加盟した新興球団、宇都宮チャオズの監督に就任したんだけど、この監督がまた、最下位が定位置の自チームの注目度を上げるためか、それともサッカーに押され気味のプロ野球を盛り上げようとの大きな心持ちで発言してるのかは知らないけど、分かりやすく“目に見える敵”を設定してきた。 それが我が東京ラビッツと、かつての教え子で、ラビッツの中心選手でもある清武だった。 その宇都宮の監督は、事あるごとにラビッツと清武を敵視するようなコメントを出し始めた。 “清武に打たれても、直ちに影響はない”と。 その発言が、プロ野球ファンに一定数いるアンチラビッツに受け入れられ、ラビッツが勝ちすぎること、そして清武が打ちすぎることへのやっかみから、ラビッツと清武は、アンチラビッツ共通のシンボル認定されてしまっていた。 その非難中傷というのも多岐にわたっていて、特に清武に向けてのものだけを抜粋すると、『水道橋ドームには清武の打席だけ、ホームベースからセンター方向に空調の風が吹く』とか、ラビッツ主催試合では、所謂“飛ぶボール”(通称ラビットボール……そのまんまじゃん)が使われている』とか、『清武のバットは高反発の圧縮コルクが入っている』などの“とるに足らないウワサレベルのカワイイものから、『お金を使って相手投手を買収している』とか、ホームラン王争いをする相手バッターを脅している』等の誹謗中傷。 そして極め付けは『清武ドーピング疑惑』…。 筋肉増強剤を使っているのではないかと。 私としては、ただ単にわがままボディなだけだと信じてはいるんだけど、清武がノーコメントを通すものだから、週間文鎮とか、週刊沈丁なんかの電車の中吊り広告に『疑惑は深まった』との見出しが踊ってしまう羽目に。
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