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1ヶ月後、私は田崎と結婚した。
知らない町のアパートで暮らし始めた。
平穏な日々が流れ……
「田崎さんの奥さん」になって10年の月日が経った。
平凡な2DKのアパートのキッチンで家族のために料理する。
今夜はハンバーグにしよう。
夫の好きな和風煮込みにしようか、息子の好きなきのこソースにしようか。
家族のために
玉ねぎを刻んでいると、
暖かい涙がこぼれ落ちた。
私の遠い過去、
もう過ぎ去った私の過去、
息子が知らないままに、消えていってほしい。
息子は何も知らないまま、
陰りのない道を生きていってくれますように。
(おわり)
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