われわれは対等か

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鋭く研ぎ澄まされた言葉は、人を容易に殺してしまう。世の中には、そういう言葉が事実存在する。 絶対に触れられたくない、思い浮かべることすら忌々しい、なるべく忘れていたい、そういう弱点が人間には必ず存在する。そういった話題に近づく者には死に物狂いで抵抗し、遠ざける。同じ恥部を持つ者同士であれば、こういった心配はない。お互いが生温い配慮をしあい、決して怯えずに済む関係に浸っていようとする。 言葉で人を殺すなら、まさにこうした点を刺すことが肝要だ。 では、そのためにはやはり自分自身の悍しい恥部について触れなければならない。自分にとってなにが一番苦しいか、傷つくか、怯えているのか、これに目を向け知ることができれば、最強の切れ味を会得できるのだ。 予め己の弱点を理解していれば、他人から刺されることも怖くないし、自分と同じ恥部を持つ者に対しては生殺与奪を握ることさえできる。 これは割れたガラスのナイフのようだ。相手を深く刺そうとすれば、その分強く握りしめなければならず、そしてその分だけ己の手は引き裂かれる。だから、傷つくことを恐れる者は他人を刺すこともできない。
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