われわれは対等か

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崖の淵までまだ幾ばくか余裕があるのに、この行く末、この絶望を知ってしまうとき、皆その足で淵まで歩んでいき、そのまま滑落していく。 この無残な結末を知っていながら、しかし自分の命が惜しい者は、崖の淵、際の際まで、足の指先が淵にかかった状態で、これまでの道程を思い返し、立ち止まる。死は一寸先にある。 眼前に迫った死と、死ぬより辛いと思っていた受け入れがたい事実とが、自分の中で葛藤する。すると、どれも死よりはマシだという気がしてくる。あれも、これも、あの時の恥ずかしい振る舞いも、どれもこれも死を受け入れることに比べればなんとかなってしまう。 気づけば、自分を包み隠すものはなにもなくなっていた。本当に裸そのもの(頭髪や陰毛さえ!)。この世の全ての圧力から解放された時、そのむかし常に感じていたあの息苦しさは、霧が晴れるように消え去っていた。
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