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「社長、はした金に興味はありませんよ」
鼻で笑うような声。続けて彼は言う。
「ミシン目1カットじゃ話にならない。5ミシン目までですよ。つまりその満了書の破棄」
耳を疑うというレベルではなかった。絞り出すように答える。
「君……あなたはもしかして」
「勝ち組の社長さん、さっきの会議でオレの顔見ても気づいてなかったみたいですね」
「……やはり」
「電気設備の点検依頼、コーヒーへの下剤投入、通るであろう通路のトイレを確認し、すべての紙を取り除く作業。全ててめえみたいなやつに対してだ。一苦労だったぜ」
まさに奇襲。
こいつは生まれつきの腹黒い男、どこまでいっても僕のイジメっこ。
「そこまで……こんなことして何になる。もう昔の君と僕じゃないんだ」
「そう、その通りだよ。昔のオレとお前じゃない。だからこうなった。いつまでもオレだと気づかないお前に、何度もへこへこと頭を下げていたオレの気持ちがわかるか?」
ドアの向こうにいる男が、イジメっこのリーダーであったなんて今までまったく気づかなかった。
なぜなら、小学校のときはまともに彼の顔を見る勇気が無かったから。
リーダーだった男は「さあ、早くしろ。ケツが乾いたら、ケツもパンツにも匂いがべったりだ。一流企業の社長さんが哀れな存在になるぜ。あれだけ偉そうにしてたやつが」吹き出しそうに笑っていた。
「わかった……これは破棄する」
「いい判断だ。後からやっぱり止めたは無しだ。全部録音済みだぞ。今の言葉を抜き出して、会議にかけることにするからな」
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