どまんなか。

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どまんなか。

 なんとかギリギリ滑り込みでファックスも間に合い、窪谷社長からの許可も降りた!  さていよいよセンターの発表だ──と、思っていたのだが。歌詞が変更になった影響で歌割りの修正やらバックコーラスの収録やらが必要になるらしく、結果はまた日を改めて伝えられるという。……もう、焦らすなあ。  私は最初からセンターになれるなんて思ってもいないし、特別意識したりはしないけど──やっぱり、食堂内のこの雰囲気はどうにかしてほしい。 「いやあ……奈央の詞、良かったよ」 「そうそう。私たちの活動がそのまま曲になったみたいで」  こんな会話をしながらも、全員、どこかうわの空である。特に現段階でのセンター候補ナンバーワン、しーほの……ほのちゃんは、落ち着かない様子でスマートフォンの電源入れたり消したり──をくり返している。  多分、おそらくだけど、1日や2日では連絡は来ないと思うよ……。 ──それから3日後。私たちは菅野さんの車で事務所に向かい、そのまま会議室に通された。これの意味するところは──もう、誰もが理解していた。 「……それではいまから、7Step初のオリジナル楽曲『セブンステップ』のフォーメーションを発表します!」  キター!!!!! 「この曲では、前列3人、後列4人での陣形になるので…………」  菅野さんが後ろのホワイトボードにマグネットをぺたぺたと貼り付けながら話を続ける。 なるほど、つまり今回の立ち位置は──  4_5_6_7  _1_2_3_ ……こういう並びになるワケだ。図を見たまま、2番の子がセンターということになる。 「まずは後列4人を左から順に説明するわね」  後列──4、5、6、7番のメンバー発表か。 「4番、獅童(しどう) (よう)」 「はい」 「5番、琴石(こといし) 奈央(なお)」 「はははっ、はい」 「6番、内葉(うちば) 莉香(りか)」 「……私か」 「7番、照月(てるつき) 萌絵(もえ)」 「はいっ!」  私は……5番。予想通りといえば予想通りか。最後の最後、7番まで引っ張る──くらいのドキドキ感はほしかったところだが、まあ、妥当な位置だろう。  外側にやや長身寄りのメンバー、内側に低身長組、という配置になっている。全体的な見栄えは良いだろうけど、私と莉香ちゃんは、ほとんど隠れちゃうんじゃないかな……。 「そして、前列の3人は……」  きたきた! メインディッシュ!! ……この3人は誰がセンターになってもおかしくないから、目が離させない。 「1番、吉井(よしい) 穂花(ほのか)」 「…………はい」  ドキドキ。 「3番、飯田(いいだ) かがり」 「はいっ」  あああ……かがりん! 惜しかった!! ……と、いうことは──。 「2番……センターは、土間(どま) 栞菜(かんな)!」 「──え、え、本当に……?」  メンバーから一斉に拍手が起こる。当のドンちゃん本人は、まだ戸惑っている様子だ。 「選考の理由は、なんといっても華があること。そして、ここで自己紹介をしてもらったときに唯一、“みんなで”頑張りたいと──今後のグループ活動への意識の高さもうかがえたことが決め手でした」  自己紹介って……初期も初期の、そんなところまで見られていたとは! センターになるような子は最初から、ということなのだろうか。 「あの……私がセンターなんて……実感もないし信じられないんですけど、任せていただいたからには全力で頑張りますので、よろしくお願いします!」 「なんで敬語なんだよ〜」 「頑張れ〜マドンナちゃん!」  会議室は暖かな祝福ムードに包まれていた。ドンちゃんはその人柄から、みんなが守ってあげたくなる、支えてあげたくなるような子なのだ。かわいい。天使。 ──しかし、私は見てしまった。  悔しそうに俯いて、唇を噛んでいるほのちゃん。その右手は……ぎゅっと、力強く握りしめられていた。 ──こうして、ライブパフォーマンスまでの“濃過ぎる”日々。その幕が上がったのである…………。
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