3人が本棚に入れています
本棚に追加
どまんなか。
なんとかギリギリ滑り込みでファックスも間に合い、窪谷社長からの許可も降りた!
さていよいよセンターの発表だ──と、思っていたのだが。歌詞が変更になった影響で歌割りの修正やらバックコーラスの収録やらが必要になるらしく、結果はまた日を改めて伝えられるという。……もう、焦らすなあ。
私は最初からセンターになれるなんて思ってもいないし、特別意識したりはしないけど──やっぱり、食堂内のこの雰囲気はどうにかしてほしい。
「いやあ……奈央の詞、良かったよ」
「そうそう。私たちの活動がそのまま曲になったみたいで」
こんな会話をしながらも、全員、どこかうわの空である。特に現段階でのセンター候補ナンバーワン、しーほの……ほのちゃんは、落ち着かない様子でスマートフォンの電源入れたり消したり──をくり返している。
多分、おそらくだけど、1日や2日では連絡は来ないと思うよ……。
──それから3日後。私たちは菅野さんの車で事務所に向かい、そのまま会議室に通された。これの意味するところは──もう、誰もが理解していた。
「……それではいまから、7Step初のオリジナル楽曲『セブンステップ』のフォーメーションを発表します!」
キター!!!!!
「この曲では、前列3人、後列4人での陣形になるので…………」
菅野さんが後ろのホワイトボードにマグネットをぺたぺたと貼り付けながら話を続ける。
なるほど、つまり今回の立ち位置は──
4_5_6_7
_1_2_3_
……こういう並びになるワケだ。図を見たまま、2番の子がセンターということになる。
「まずは後列4人を左から順に説明するわね」
後列──4、5、6、7番のメンバー発表か。
「4番、獅童 曜」
「はい」
「5番、琴石 奈央」
「はははっ、はい」
「6番、内葉 莉香」
「……私か」
「7番、照月 萌絵」
「はいっ!」
私は……5番。予想通りといえば予想通りか。最後の最後、7番まで引っ張る──くらいのドキドキ感はほしかったところだが、まあ、妥当な位置だろう。
外側にやや長身寄りのメンバー、内側に低身長組、という配置になっている。全体的な見栄えは良いだろうけど、私と莉香ちゃんは、ほとんど隠れちゃうんじゃないかな……。
「そして、前列の3人は……」
きたきた! メインディッシュ!!
……この3人は誰がセンターになってもおかしくないから、目が離させない。
「1番、吉井 穂花」
「…………はい」
ドキドキ。
「3番、飯田 かがり」
「はいっ」
あああ……かがりん! 惜しかった!!
……と、いうことは──。
「2番……センターは、土間 栞菜!」
「──え、え、本当に……?」
メンバーから一斉に拍手が起こる。当のドンちゃん本人は、まだ戸惑っている様子だ。
「選考の理由は、なんといっても華があること。そして、ここで自己紹介をしてもらったときに唯一、“みんなで”頑張りたいと──今後のグループ活動への意識の高さもうかがえたことが決め手でした」
自己紹介って……初期も初期の、そんなところまで見られていたとは! センターになるような子は最初からモノが違う、ということなのだろうか。
「あの……私がセンターなんて……実感もないし信じられないんですけど、任せていただいたからには全力で頑張りますので、よろしくお願いします!」
「なんで敬語なんだよ〜」
「頑張れ〜マドンナちゃん!」
会議室は暖かな祝福ムードに包まれていた。ドンちゃんはその人柄から、みんなが守ってあげたくなる、支えてあげたくなるような子なのだ。かわいい。天使。
──しかし、私は見てしまった。
悔しそうに俯いて、唇を噛んでいるほのちゃん。その右手は……ぎゅっと、力強く握りしめられていた。
──こうして、ライブパフォーマンスまでの“濃過ぎる”日々。その幕が上がったのである…………。
最初のコメントを投稿しよう!