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センターの宿命。
それからのスケジュールは殺人的だった。
1ヶ月後に開催される事務所主導のライブ『LIVE PUNK』への出演に向けて、レコーディングと振り入れ、さらにはMCの打ち合わせ……と、課題が山積みだ。
あの、チラシ刷りの雑用でひいひい言っていた頃の自分では想像も出来ない過酷な環境である。
そんな状況だからこそ、全身全霊これまで以上にメンバー全員で力を合わせて、私たち『7Step』のファーストステージを成功させなければならない──のだが。
「ほのちゃん……そろそろレッスンはじまるよ」
ほのちゃん、こと吉井 穂花が寮に戻ってくるなり、自室に閉じこもってしまったのだ。かれこれもう、2時間はこうしている。
「ねえ。だから放っておこうよ。私たちだって時間ないんだし」
「たしかに。かなりロスしちゃってるかも……」
「でもさ、前列メンバーがいないのはマズいでしょ」
「ダンスだって全体で合わせないと意味ないしね」
──この通り、グループ内の雰囲気も最悪である。
「お願いだから、ほのちゃん……」
こうなってしまった理由には、大方、見当が付いている。そう、先ほどのセンター発表が原因だろう。
分かっているからこそ…………もどかしい。
それはみんなも同じようで、特にセンターのドンちゃん──土間 栞菜ちゃんは、ずっと俯いて黙ってしまっている。
センター争いに関しては各々に思うところがあるだろうが、実のところ一番辛いのは彼女なのかもしれない。ここで『ごめんね』というのもイヤミだし、どう声をかけて良いのか? なにが正解なのかが分からない──いま、彼女はそんな葛藤を抱えているのだと思う。
あれから数分が経ち、しばらく続いた重い沈黙を破ったのは──意外にも、センターのドンちゃんであった。
「…………穂花ちゃん、早く出てきて! これはセンター命令だからね!!」
──完全に予想外の一言。
あの気遣い上手の彼女が、まさか直球で、ほのちゃんを煽るような発言をするなんて。
……これは完全に失敗だ、ますます事態が悪化したぞ──と、思っていたところに、目と顔を真っ赤にしたほのちゃんが、ドアを勢いよく開けて飛び出してきた。
「あんただけは絶対に許さない……!」
策士・ドンちゃんの作戦はお見事…………だけど、これは、この感じは、はたして正解なのか? 現場の空気はもう、混沌状態である。
なんとか全員揃ってレッスンをはじめられることにはなったが──こんなことで、本当に大丈夫なのだろうか…………。
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