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当日。
事務所主催ライブ『LIVE PUNK』の開演当日。
いよいよ私たちのファーストステージが近付いてきた。
メンバー全員で出演アーティスト一同の楽屋を回り挨拶を済ませたあと、用意された控え室で最後の振り合わせとリハーサルを行う。
「ここさ、つま先揃った方がカッコイイと思う」
「歌もハモリの部分がちょっと不安定なんだよねー」
オープニングまで残り30分──自然と練習にも熱が入る。
時間いっぱい、気になる点を1つずつ潰していき、ようやく全員が納得できるまでのパフォーマンスが完成した。
「じゃあ、あとは本番までクールダウン。ゆっくり休もう!」
ドンちゃんが汗を拭いながら手を叩く。
──本番まで、わずか10分。
私たちは各々、音楽を聴いたりゲームをしながら、それぞれ独自の“精神統一”に身を投じていた。
幕が上がる直前──舞台袖から客席を覗き込み、私たちは言葉を失った。
……想像を絶するほどの観客の数。その視線に押し潰されてしまいそうで、プレッシャーから一気に心臓が高鳴っていくのが、自分でも分かる。
「こ、ここに出て行くの……? いまから?」
「オープニングで会場盛り上げられるのかな……」
なにを隠そう、今回『7Step』の出演は完全にシークレット。まだ誰も知らない、極秘のサプライズなのである。
そんなハードルが上がりきった状態で、私たちはステージに立たなければならない。
『さて、ここでみなさんにお知らせ──。なんと、窪谷社長が直々にプロデュースするウワサのアイドルグループが、いよいよ本日……初お披露目! この場でオープニングアクトを務めていただきます!』
会場いっぱいにMCの陽気な声が響き渡る。やめろやめろ、むやみやたらにオーディエンスを煽らないでくれ……!
『それでは登場してもらいましょう、期待の新星……7Stepだー!』
とうとう、この瞬間がやってきてしまった。足が震える。喉が渇く。頭がボーッとしはじめる。
──でも、行くしかない!
「みなさんこんにちはー! 7Stepでーす!」
私たちは今日ここで、伝説を作り上げるんだ…………!
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