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君が嫌いだと叫びたい
──大会当日。
「見て、見て! ほら、湘北のユニフォーム! これ手作りなんだけどさあ……」
くろろが嬉しそうにはしゃいでいる。可愛いな、こんちくしょう。
「じゃ、あたしは10番な」
なんだかんだ弥生もやる気になってくれているようで、大変結構。
さてさて、俺も久しぶりにスポーツに汗水なんて流して頑張ってみますかね……。
「えーっ! もしかして弥生ちゃんっ!?」
耳をつんざくようなカン高い声の方へ、イヤイヤながら振り返ると──。
──うわっ、ケッバいなあ〜! なんだコイツ。
「…………野薔薇 こいる」
そうか、コイツか。弥生の元・ライバルってのは……。
「ちょっとちょっと、どうしたの、弥生ちゃん!? ずいぶんと変わっちゃったんじゃない?」
「……てめえは変わらねえな」
ファッションモンスターを飛び越えて、半分ガチのモンスターみたいな格好をした小汚いヤンキー女と──その後ろには、黒のマスクに、本来のポテンシャル以上にダメージを受けているであろうボロボロのダメージジーンズの男。コイツの彼氏だろうか。ていうかお前ら、今日はバスケやりに来たんだよな……?
「オイオイ、どんな女かと期待して来てみれば……楽にヒネっちまうぞ?」
さらにあとに続き、全長2mを優に超えるであろう巨体の男が現れる。
……こ、これが例のアマチュア選手か?
これもう、アマチュアってレベルじゃねえだろ。こんなのプロだ、プロのゴリラだろうがっ!
「あ? ぶっ殺すぞ、クソバカビッグフット」
煽るな、煽るな! そして悪口のセンスがねえ!!
「……言うねえ。まっ、決勝に進む前に負けるなんて、つまんないことはするなよ?」
「こんなペラペラのユニフォームだけで判断してんじゃねえよ、アホ」
「……が、頑張って作ったのに……!」
激化する煽り合いの中、思わぬところでくろろがダメージを食らっているのが面白い。
「──よしっ、お前らいくぞ!!!!!」
その後、俺たちは試合を順調に勝ち進み……ついに残すは決勝戦のみとなった。
そしてそのお相手は──もちろん、先のゴリラ御一行である。
「みんな、いっぱい食べてね」
「あ。すんません……」
決勝までの30分の休憩の間、俺たちは、弥生の祖母・やつやさんが握ってくれたおにぎりと卵焼きをご馳走になっていた。
「ンまあーいっ!」
「ちっ……」
弥生は照れくさそうな、しかし、どこか誇らしげにも見える表情をしている。自分のおばあちゃんの手料理を褒められるのは……やっぱり、嬉しいのだろう。
「こんなに楽しそうな弥生ちゃんを見たのは、いつ以来かねえ……」
やつやさんがポツリとつぶやく。
「こうして誰かと一緒に遊んだり、バスケットして、お弁当なんか食べたり……」
しみじみとそう言いながら、最後にはとうとう泣き出してしまった。
「ちょっ……泣くなよ、ばーちゃん……」
こうしてアタフタしているときの弥生は本当にかわいらしい。ずっとこうだったら最高なんだがね。
「……負けられないじゃない、こんなところ見せられちゃったら」
「ああ。そうだな……」
そろそろ休憩時間も終わる──。
次回、因縁のライバル対決がついに決着!! 乞うご期待!
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