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試合が終るまでは…
「ヘイパッ! マイボ、マイボッ!」
ついに決勝戦の幕が上がり、試合開始早々から積極的にボールを獲りに行く俺だったのだが──先ほどから、元・バスケ部のくろろと、フィジカルヤンキーの弥生が二人で永遠(ダルビッシュ構文)とパスを回す展開が続いている。
「ヘイパッ! ヘイパッ!」
「──るっっっせえなあっ!!!!!」
弥生にボールを投げつけられる。痛い。
「……だけどついに来たぜ、このときが……!」
全速力のドリブル──からの、シュート!!
……は、残念ながらゴリラによって阻止される。
「クソッ……バカみたいにでけえ図体しやがって……」
相手の反撃──も、警戒すべきはアイツだけだ。あとの二人は……試合中にもかかわらずイチャついてやがる時点で戦力外通告もいいところだな。
……すかさずこぼれ球を拾って、パスを投げる。今度は弥生とゴリラの一騎打ちだ。
「はっ。ビッグフット、てめえ人望ねーな」
「……お前らの相手なんざ、おれひとりで充分なんだよっ!」
立ち止まって…………シュートの体勢。
「イキってんじゃねえぞクソバカァ……ッ!」
ガコンッ──鋭いショットが綺麗に決まった。
「弥生ちゃん……!」
このゲーム初の得点──。
さて、これでいよいよ、ゴリラの奴も本気になってくるぞ…………。
「ハア……ハア……」
──試合終了間近。
得点数では、わずかにこちらが負けている。
「ゲームセットだな」
ちくしょう……アイツ、本当に一人で俺たち三人を圧倒しやがった……! このまま負けちまうのか……?
「なに弱気な顔してんの、尚斗! 試合が終わるまでは折れないで。“諦めたらそこで試合終了”なんだから」
くろろ──。
どうでもいいけど……マジでバスケの試合中にこの喩えしてくる奴、はじめて見たな……。
「……それ普通、なんか違うことやってるときに言わね?」
弥生が俺の言いたいことをすべて代弁してくれた。
「てめえら、なにゴチャゴチャ言ってやがる! もう試合は諦めて降参か!?」
うるっせえなあ。その言葉、そっくりそのままお前の後ろでベロチューしてるバカップルどもに返してやるぜ。
お前の武器が圧倒的なワンマンプレイなら──俺たちは、チームの結束力……三位一体で応戦してやる……!
「行けっ、くろろ!」
なんとかゴリラからボールを奪い、くろろに繋ぐ。
「……よしっ! 弥生ちゃん!」
華麗なドリブルから、的確なパス。
「…………いくぞオラァァアアア!!!!!」
完全ノーマークになったそのネットに──強烈な…………スラムダンク!!
「──そこまで! 試合終了ッ!」
勝利のハイタッチは、この秋の紅葉のように美しかった。
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