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ていしょく、てんしょく。
弥生が『味の平木』で働きはじめて早数週間。
奴はすっかり、店の“看板娘”となっており……。
「自分で紹介しておいてなんだが……まさか、アイツにここまでの適性があったなんてな」
「厨房から接客まで、いまじゃほとんど弥生ちゃんがやってるんだもんね」
「これじゃあ『味の平木』じゃなくて、やよい軒だな。ハッハッハ」
「うっわ……」
くろろの冷笑にも満たない軽蔑の眼差しを受けながら、俺たちは、弥生がシフトを上がるまで店のテーブル席で時間を潰していた。
「でも……なんか、悪いよね。お客さんが座る席で、こうやって何時間も……」
「この時間は客足も少ないし、問題ないだろ? それに、平木さんだって弥生のことがある以上、文句は言えないさ」
…………と、いうのも。
なんと、弥生効果で店は商売繁盛、千客万来。お昼どきには大行列ができるまでに潤っていたのだ。
平木夫妻もすっかり気を良くして、いまでは『弥生定食』なるものまで売り出しているのだから、もう弥生さまさま──当然、奴には頭も上がらない……というワケだ。
「──わりい。遅くなった」
「いやいや、お疲れさん」
帰り支度を済ませた弥生を出迎え、俺たちも席を立つ。
これから恒例の、俺の家で──今日は、ボードゲームかなにかをやるという話だったか。とにかく朝までドンチャン騒ぎだ。
そう。いつ苦情がきてもおかしくないくらいの、バカ騒ぎを…………な。
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