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モノクロームな吐息。
隣人の、奇抜というか……奇特というか。そんな服装を目の当たりにして、俺はなにも知らない、気付かなかったフリをして、さっさとその場を立ち去ろうと足を早める。
「──待って!」
ゴスロリに腕を掴まれたっ!
「あの、これはその、そうじゃなくて……えーと……」
伊噴さんの顔は見るみる赤く染まり、図らずも黒を基調としたモノクロームな着合わせに対する“挿し色”となっていた。正直、色っぽい。素直に(自主規制)です。
「……コスプレとかお好きなんですか?」
俺も俺で、なにを余計なことを訊いているんだ。この話、わざわざ広げる必要があったか?
「えっ……! あの、好きというか、ううん…………。とっ、とにかく、ちょっと中でお話ししませんか?」
彼女がレースの手袋を擦り合わせ、白い息を吐く。
色々な意味で気になる女性からこんな風に誘われて、ほいほいと着いて行かない男がいるか? 少なくとも、俺は落ちたね。
そんなワケで。なんとも棚ぼたな話ではあるが……思いがけず伊噴さんの部屋にお招きいただいた俺は、コンビニに行く用なんてすっかり忘れ、いつもよりひとつ手前のドアノブに手を掛けているのである──。
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