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「あ、あれ?」
雪子はびっくりした。それは、超絶底辺作家、黒川ミミック先生らしくない、まともで面白い漫画だったのである。
なんといっても、あの「ひょっとこリーマン」と違って、話にちゃんと中身があり、何をどう楽しめばいいのかわかる。ミステリーものながらも、変に理屈がこみいってなく、話自体も三十二ページですっきりまとまっており、主人公の少年もけっこうかっこいい。女の子もかわいい。というか、相変わらず画力高い。
これはもしや……とてもよい漫画では?
「黒川さん、ちゃんと面白い漫画も描けるんだ……」
雪子は感動した。ようやく彼を一人の漫画家として尊敬できるようになった気がした。ただの単発の読みきりではあるけれども。
彼女はすぐにその月刊サバト最新号を持って、家を出て、黒川の部屋に向かった。前に、「ひょっとこリーマン」の面白さがわからないと、正直に感想を述べて、彼を傷つけてしまったことを思い出したのだ。あれはあまり親しくないころのことだったけれど、あんなことをしてしまった以上、今日、彼の漫画を面白く思ったことはきちんと伝えておきたい。
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