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それから、雪子はいったん自宅に戻ってアンケートはがきを書いて切手を貼り、黒川と一緒に最寄のポストに行った。日はすでに落ち、外は真っ暗だった。
はがきは、二人で同時にポストに投函した。
「い、入れますよ!」
「はい」
からん。二枚のはがきは速やかに赤い金属製の箱の奥に消えていった。
「うわあ。本当に投函されちゃいましたね! 僕の漫画推しのアンケートはがきが二枚も! すごい!」
「連載、とれるといいですね」
「うーん、どうでしょうかねー?」
黒川はやはり自信がなさそうに首をかしげる。
「でも、結果がどうであれ、雪子さんが僕の漫画を面白いって言ってくれて、僕の漫画にアンケートはがきを書いて出してくれたのが、僕はすごくうれしいです。他の誰でもない、雪子さんだからこそ、僕はそう思うんです」
黒川は雪子をまっすぐ見つめ、にっこり笑った。その黒い瞳は、かりそめの結婚式を挙げたときと同じ、やさしい光をたたえているように見えた。
「は、はい……」
雪子はあのときと同じように、胸が高鳴り、顔が熱くなるのを感じた。
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