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結局、その日はひたすら荷解きをするだけで一日が終わった。
翌朝になると、彼女はアパートの廊下に使用後のダンボールを並べて置いた。これらは後で業者が引き取りに来るはずだった。そして、引越しの際に出た、梱包用のヒモなど業者に引き取ってはもらえないゴミを袋にまとめて、一階に降り、アパートのすぐ前のゴミ捨て場に捨てに行った。
そこはこの近辺にある複数のアパートが共同で利用しているらしい場所だった。早朝なのでたいしてゴミ袋はたまっていなかった。だが、どういうわけか、そこには明らかにゴミではなさそうなモノが転がっていた――。
「え――」
と、とたんに声を失う雪子であった。
そう、ゴミ捨て場の隅で、ゴミ袋の山に前のめりに頭を突っ込んだ形で、一人の男が倒れている。背の高い、やせぎすの男だ。緑色のジャージの上下を着ており、髪は短い。額から血を流しているようで、ゴミ袋にそれが付着している。そして、ジャージの裾や袖からあらわになっている肌はびっくりするほど生白い。血の気を感じさせない白さ。
というか、これって、もしかして……死体?
「きゃああっ!」
と、思わず雪子が叫ぶと、
「……あ」
そこで死体が声をだし、体をわずかに動かした。ぴくっと。雪子はまた「きゃあっ!」と悲鳴を上げた。なんなの、もう!
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