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「え、黒川さん?」
「はい、実はこれ、僕の番号だったんですねえ」
そう、電話に出たのは黒川だった。しかも実にのんきな声である。しかもしかも、なんか声が異常に近くに聞こえる。というか、呼び出し音からしてすぐ近くで鳴っていたような――。
雪子ははっとして、その音がしたほうを見た。すると、そこはベランダで、なんとそこに黒川が立っていた! 昨日と同じジャージ姿で、手にはスマホを握っている。
「な、なんで黒川さんも、そこに――」
「いやあ、ついさっき赤城さんの悲鳴が聞こえたもので」
黒川は開け放たれた窓からゆっくりと室内に入ってきた。
「だ、誰だ、キサマ!」
先に部屋に上がりこんでいた男は、黒川の突然の乱入に激怒したようだった。
「俺と雪子との時間を邪魔するな! 消えろ!」
と、男が強く叫んだ瞬間だった。室内にあるさまざまなものがいっせいに宙に浮き、黒川めがけて飛びかかった。中には台所の包丁など、物騒なものも混じっていた。
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