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「あの、あなたは――」
「あー、はい。僕ですよ。黒川一夜です」
額にツノを生やした赤い瞳の美男は、間髪を入れず雪子に自己紹介してきた――って、あれ? この人、あの黒川さんなの? 雪子はびっくりした。
だが、よく見ると、着ているのは貧乏臭いジャージのままで、確かに黒川本人に違いなさそうだった。声も同じだし。
「な、なんでそんな姿に?」
「そりゃあ、普段からツノとか牙とか晒してるわけにもいきませんしね。目も赤いですし」
と、答える黒川の口の中には、確かに立派な牙が生えているようだった。これも、さっきまではなかったものだ。
「いや、そうじゃなくて! なんでいきなり姿が変わるんですか! それに、なんでツノとか牙とかナチュラルに生えてるんですか! 目も赤すぎますよ! それじゃ、まるで雪ウサギ――」
と、雪子が怒涛のツッコミを入れ始めたところで、
「雪子! 俺以外の男と口を聞くなあっ!」
悪霊が再びぶち切れたようだった。今度は雪子めがけてポルターガイスト現象でモノを飛ばしてきた!
「きゃあっ!」
突然のことに、雪子は当然何の対処も出来なかった。とっさに身を固くし、目をつむった。
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