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だが、直後、彼女は自分の体がふわりと浮き上がるのを感じた。何かがぶつかってきたはずの衝撃はどこにもなかった。
なんだろう? 目を開けると、彼女はいつのまにやら黒川の懐に抱えられていた。ついでに立ち位置も、いつのまにやら部屋の反対側に移動していた。どうやら一瞬のうちに黒川にここまで運ばれ、助けられたようだった。
「あーあ、人の部屋をこんなに散らかして」
雪子を軽々とお姫様抱っこしたまま、黒川はやれやれといった感じでため息をついた。確かに、部屋はひどい有様だ……。
「大丈夫ですか、赤城さん? 何か当たったりしませんでしたか?」
「は、はい……」
黒川がまじまじと顔を近づけ覗き込んできて、雪子はちょっと赤面してしまった。今の黒川はやはり、びっくりするほどの美形だ。
「き、貴様! 俺の雪子に勝手に触るんじゃないっ!」
だが、そうしている間にも悪霊はさらにポルターガイスト現象で二人にモノを飛ばし、攻撃してきた。
そしてそれはやはり黒川に何のダメージも与えなかった。彼は雪子を抱えたまままた横に跳躍し、それらをかわしたのだった。ふわりとした軽やかな動作のようで、実際はとても敏捷な動きのようだった。しかも体重五十キロの雪子を抱えて、である。
ゴミ捨て場で発見したときは、あんなに弱弱しかったのに……。雪子はやはり信じられない気持ちだった。今の黒川はまるで別人だ。いや――別生物?
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