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「く、黒川さん、あなたはいったいなんなんですか? 明らかに普通の人間じゃないですよね?」
「まー、そうですね。昔から妖怪とかアヤカシとかそういう風に呼ばれてる系の種族ですね」
「妖怪って」
さらっととんでもねえことカミングアウトしてくる男である。妖怪って、実在したんだ……。普通ならとうてい信じられないことだが、たった今、信じがたい光景を目の当たりにしたばかりの雪子は信じるほかなかった。
確かに、この目の前にいる男は、普通の人間ではありえない。さっきから、いや出会ったときから、いろいろおかしい。
「僕は妖怪の中の、鬼の一族なんですよ。ほら、ここにツノがあるでしょ?」
「なるほど、確かに……」
額に生えているツノを見る限り、そう呼ぶしかない生き物のようだ。
「じゃあ、黒川さんは鬼だから人間を食べたりするんですか?」
「まあ、鬼にも細かく派閥があるので、そういう食性の鬼もいますけど、僕はそうじゃないですね。僕が好んで食べるのは、亡者、すなわち死んだ人間の魂です。それも、強い悪意や怨念を帯びた、いわゆる悪霊と呼ばれるものですね」
「あ、それで今、人魂を食べちゃったんですか」
「はい。とても美味しかったですよ。こんなごちそうを僕に用意してくれるなんて、赤城さんはなんていい人なのでしょう!」
「いえ、別に、黒川さんのために何か用意したわけでは……」
勝手に死んで、勝手に悪霊になって襲われただけなのに、感謝されても、その、困る。
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