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2020.9.18-19 鬼怒川温泉(栃木)⑭
さてさて温泉街(というか駅前のお土産屋さんが集まってるエリア)を一通り巡ると、ぱらぱらと小雨が降ってきました。
朝からどんよりしていたので、まあよく今まで保ったな、という感じです。
私は鞄から折り畳み傘を取り出して開きました。
ところで折り畳み傘を作った人は本当にすごいですよね。傘ほど使う時は大きく、使わない時は小さくなってほしいものはないですしね。発明者はそんな全人類の我儘な矛盾を叶えてしまったわけです。これを天才と言わずして何と言うのでしょうか。もしこの世に折り畳み傘が存在せず、大きい傘しか無かったら傘を普段から持ち歩くという発想ないですから。
つまりその天才のおかげで私は今、冷たい雨から身を守ることができているということです。ありがたいですね。
まあその話はさておき(このエッセイを読んでくださっている方はもうわかっているとは思いますが、私はよく話が逸れます)
私は再び伏線を思い出しました。
そうです。手打ちそばです(約9か月前の伏線)
駅に降り立ったときに見えた真っ暗な看板を思い出しながらその方角に目を向けます。
あ、あれだ!
暗闇の中でも見えたほどの大きな看板だったので、曇りとはいえ昼間ならすぐにすぐに見つかりました。
時刻は11時30分。お昼時ですね。
看板を目指して、私は歩みを進めました。
――はい、到着。(はやい)
駅から蕎麦屋まで徒歩5分程の道程でしたが、道中は何もなかったのでエッセイ上では1秒で到着します。
強いて言えば鳥の鳴き声が聞こえたことくらいでしょうか。
もちろんここからその鳴き声を頼りに謎の鳥の正体を探る展開があっても良かったのですが、お腹の空いていた私の脳内はそんな鳥知ったこっちゃなく蕎麦はあったかいのか冷たいのかどっちにしよう、ということでいっぱいでした。
さてさてそんなこんなで到着した蕎麦屋はなんだかこう「ここで食べる蕎麦、絶対おいしいじゃん」と思わせてくれるような感じです(語彙力がないのは空腹のせいですきっと)
しかもちょうど11時30分が開店時間だったらしく、お客さんもあまりいる様子ではありません。引き戸を開けて暖簾をくぐると、私の他にはもう一人座っているだけでした。
「いらっしゃいませ~」
優しそうなおばあちゃんが穏やかな声で迎え入れてくれます。
なんだこの実家感は。そんなことを思いながら「一人です」と言うと、「お好きなとこに座ってね~」と返ってきたので私は端のテーブル席に座りました。
そしてメニューを開きます。注文はすぐに決まりました。
「天ぷらと蕎麦のセットください」
メニューの一番最初に一番大きい文字で書いてあったからです。絶対推しでしょこれ。
まあもし推しでなくとも蕎麦と天ぷらって最高ですよね。良い旅行をしてるなあって感じ(語彙力がないのは略)
それから少しの間おばあちゃんが持ってきてくれたあったかいお茶を飲みながら待っていると(店内は少し暗めで、木でできた椅子やテーブルが並ぶ簡素で味わい深いものでした)蕎麦が運ばれてきました。
(4種の天ぷらと蕎麦セット。何故か見切れている)
めちゃめちゃ美味しそう! 一刻も早く食べたい!
というわけですぐに蕎麦を一口。
……いやめちゃめちゃ美味しいんですが。
蕎麦の香りが高く、のど越しも良い。天ぷらは揚げたてでまだ中は熱くサクサクと食感は軽い。そして素材の味もしっかりとありました。私が普段食べているスーパーの総菜とは別物です(当然です)
あまりの美味しさにあっという間に食べ終わりました。気付けばその場には空になった皿と、幸せになった私がいるだけでした。
最後に蕎麦湯を頂いて、私は幸せを連れて店を出ました。外はまだ雨が降っていましたが、心は晴々としています。
さて、と時間を見れば12時を少し過ぎたところ。
まだ帰りたくないよー。
そんな子供みたいな我儘も大人になった私は叶えられてしまうのです。自分に責任を持つ代わりに自由を得たのです。たとえ明日の私が疲労で何もできなくなってもいい。
いつまでもここにいたい、と鬼怒川はそんなことを思わせてくれる場所です。
まあでもずっと帰らないわけにはいかないので(そこはやっぱり社会人)もう少しだけ堪能して帰ろう。
そう思って私は再び歩き出しました。
東京帰宅まで秒読み。
私の弾丸遠足はもうちょっとだけ続きます。
もう少しだけお付き合いくださいませ。
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