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拠点確保!確保〜!
相場がわからない以上、頷いてもらうしかない。と考えているとちゃこが耳元へ近寄って囁いてきた。
「あの、ダイアウルフ……紙には銀札2枚だったはずなのに、ちょっと高くなってるね」
え、と思いながらクリスさんの方へ向けば私たちの話が聞こえていたのか微笑み答えをくれる。
「まるまる一匹、内臓も傷つけられてない状態で捕まえられることは滅多にないんです。全てキレイな状態ですので、お高めに査定させていただいております」
「それでお願い」
ショウコがポツリと返せば、お金の準備をしにクリスさんが退出する。
「プルちゃん偉いね! ご飯美味しの買ってあげるからね!」
そう言いながらプルちゃんをヨシヨシと撫でるちゃこ。いやまだお金がどれくらいのものかわかってないよ!?
「大丈夫。宿に10日ほど泊まれる」
労働なしで、10日ニート生活を送れると考えればうん、プルちゃん偉い。
「こちらになります」
木のトレーに13枚のお札と、5枚の硬貨が置かれている。
うん本当に日本のお金みたいだな、なんて思いながらショウコが受け取るのを見つめる。ショウコはちゃっかり自分のお財布に全部しまい、部屋を出ようとするので慌てて追いかける。
「あ! クリスさんありがとうございました!」
「またお待ちいたしております」
部屋に入ってきた時と同様キレイなお辞儀で見送ってくれるクリスさんに手を振りながら部屋を後にする。
問屋さんを出ればショウコが、周りをキョロキョロと見渡す。
「あと、どうする? まず、宿?」
そう言えば、ショウコが首を振る。でも、寝泊り大事じゃん。
「部屋借りる」
ショウコの目線の先には、一見すると問屋さんと似たような建物がある。
よく見れば、問屋さんより窓の数が多い……アパートみたいなもんなんだろう。
ショウコは私たちを待たずに、歩き出す。
「お金足りるかもわからなくない!?」
「大丈夫」
「なんでそんなに詳しいの!?」
「勉強した」
なにをもってだよ!! と思いながらもショウコしか言葉が分からない以上従うしかない。
ちゃこは、もう観光気分で周りに出ている屋台や道ゆく人たちをキョロキョロと見回しながらまた幻覚の尻尾を振っていた。
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