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異世界転移、出来ちゃったみたいです。
グラグラと船酔いのような感覚に、吐き気を覚える。回らない頭で、周りを見渡そうと顔を動かせば尚更吐き気はひどくなっていく。体に力も入らず、目を閉じたままぐったりと動くことをやめた。
どれくらいそうしていただろうか、背中をトントンと叩く優しい感覚に目を覚ます。
「大丈夫? マホ?」
背中を優しくさすっていたのはショウコだった。手を強く握ったり開いたりを繰り返して力が入ることを確認して立ち上がれば、ショウコの膝に頭を預けてまるまるちゃこが目に入る。ちゃこはすーすーと気持ちよさそうに寝息をたてていた。
「ショウコもちゃこも無事か、よかった〜!」
思いの外大きい声が出て、驚いたちゃこが顔だけを上げて猫のように頭の毛を逆立てていた。
「!? ううーん、ちょっと、寝過ぎちゃったかなぁ〜?」
ゆっくりと伸びをして起きてきたちゃこはいつ もと変わらないようだ。
「異世界転移成功したっぽい?」
冷静にって周りを見渡せば、見たことのない植物たちが生茂っている。ちょこまかと足元をうろつく猫のような手乗りの動物も見たことがないハート型の尻尾で水色をしていた。
「可愛いなぁ……ってこれもしかして、魔物!?」
私の目線を追い、ちゃことショウコもそちらへと目線を向ける。ちゃこが、しゃがみこんで手を伸ばせば猫っぽい何かは鳴いて擦り寄った。
「プルルルァー」
「鳴き声はブッサイクだね!」
「ちょっと、懐かれちゃったかなぁ?」
すりすりとちゃこの手に擦り寄ったかと思えば、そのまま肩まで登る。そして頬に頬擦りしてもう1度鳴いた。
「プルァッ!」
「なんか言葉分かってそうだなぁ」
そう言いながら私も、触ろうと手を伸ばせば尻尾で手を振り払われる。
「えっ、何それひどくない?」
ショウコも珍しくニコニコとして、撫でようと手を伸ばしていた。ショウコの手は、振り払われず気持ちよさそうに目を細めていた。
「私だけ?」
「マホマホ、ちょっと嫌われちゃったかなぁ?」
ちゃこがヨシヨシと頭を撫でてから、地面に下ろそうとすれば服に爪を絡ませて拒否する猫っぽい何か。
「連れてけばいいんじゃない? 隠せそうなサイズだし」
「ん〜ちょっと悩んじゃうかなぁ」
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