LINEのお陰で保たれた愛

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 二人は高校生になると、シンクロニシティが起きてお互いに恋人に裏切られた。百合も俊哉も他の生徒と出来てしまったのだ。こうなると、翔太と成美は会わずにはいられなくなった。矢張り信頼できるのは幼馴染だ!と悟るに至ったので・・・  二人が再び恋仲になるために落ち合った場所は渥美半島の先端にある恋路ヶ浜だった。チャットのやり取りで決めたのだ。持ち掛けたのは翔太。成美は当然の如く乗り気になった。二人は気心が知れているから心の内を読み合い、直接会って秘密の関係が破局したことを洗いざらい話した上で二人の愛を確認し合わない訳にはいかなかったのだ。  春休みだから季節は早春、恋路ヶ浜のバス停から伊良湖岬の白い灯台へ向かって歩いて行くと、大きな岩々で埋め立てられた磯に沿ったペーブメントに差し掛かる。そこで二人は手を繋いで歩いている。  空は彼方の水平線の上空に筋状の雲が幾つか棚引いているのが見えるのみでほぼ快晴。青々とした中に太陽が白く輝き、太陽の真下の海面も白く輝き、その白い光の太い帯が磯辺まで伸びている。それを見るだけで心が洗われるようだ。沖の方には三島由紀夫著「潮騒」の舞台になった神島が見える。監的哨跡内部で新治と初江が裸になって愛を確認し合うシーンがあるが、翔太と成美は立ち止まって神島を眺めやりながらお互いに秘密の関係が破局したことを吐露し合い、大仰に言えば、謝罪し合うだけでなく心中で懺悔して以心伝心で愛を確認し合った。  二人は相変わらず手を繋ぎながら歩き出した。細波の音と微風の音しかしない静かで空気が澄み切った中、成美が言った。 「お父さんが言ってたわ。お父さんも翔太君みたいに小学生の時、仲の良い女の子がいたのに転校を余儀なくされてしまったんですって。で、その頃は携帯電話もインターネットもなかったから連絡が思うように取れなくて、その女の子と疎遠になってしまったんですって。だから私を羨ましがって成美はいいなあ。翔太君と自由自在に連絡を取り合えてですって」 「う~ん、そうか、確かになあ・・・僕たち赤い糸で結ばれてるんだね」 「そうね」  そう言い合う二人は外面だけでなく内面も晴れ晴れと輝いていて光風霽月といった感じ。海上に煌めく波光のように美しかった。だから元カノ元カレより断然イケてるとお互いに思い直すのだった。  その思いは神島観光船に乗って神島を訪れ、八代神社を参拝した後も変わらず、晩になって誰も来なくなった監的哨跡内部で初めて交わった時も変わらなかった。霊験あらたかな八大龍王の恩恵もあったのかもしれない。  二人はお互いを優しく包み込むような穏やかな気候に守られながら素肌と素肌で二人の愛が揺るぎないものであることを確認し合うと、服を乱した儘、親の心配を余所に安心して眠りに就くのであった。
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