第18回 『元ひみこさま』3

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第18回 『元ひみこさま』3

 月のかめさんと、うさぎさんは、引き上げて行く鋳造兵士の中を、地球に向かって降りて行き、途中からコースを東にとって、かつて大陸から分断された、かの不思議のくにに、着陸しました。  前に、地球までのレースを二人でした時に尋ねた、飛鳥の都に直行したのです。  前回は、夜通しの、お祭りの真っ最中だったので、騒然とした雰囲気がありましたが、いまは、別世界のように静まり返っておりました。  やはり、夜です。  昼間は、かめさんや、うさぎさんは、目立ちますから。  もっとも、この時代は、かめさんや、うさぎさんがしゃべっても、まだ、あまり、おかしくない時代でもありました。  現実と、神話が、分離してしまっては、いなかったのです。  でも、科学の進歩には、分離してしまう必要がありました。  人間が、現実と神話を分離させたとき、かめさんや、うさぎさんは、しゃべらなくなりました。  『かつては、月の世界と、地球では、あまりに、文明や技術差が激しかった。しかし。地球人は、しだいに進歩しており、その速度が速くなっている。あと1000年もしたら、宇宙に進出することになるだろう。もう、うさぎさんやかめさんがしゃべるとは、思わないだろう。ところが、さらに先になると、自分たち以外の生き物にも、言葉があることがわかってくるだろう。』  元ひみこ様はそう言いました。  うさぎさんは、口を挟まないで、じっと聞いておりました。  『そなたは、本当に、真実を知りたいのか?』  『そうです。』  『それが、真に不愉快なものであってもか?』  『ううん・・・聞いてみないと、分からないですが、真実は何物にも代えがたいと思います。』  『そうか。この、かめさんが聞いていても良いのか?』  『もちろんです。ここまで、一緒に、行動して来たのですから。』  『そうか。よかろう。では、聞くが良い。』  元ひみこ様は、天を仰ぐような姿勢を取りました。  『そもそも。月の文明は、よその宇宙からきた者たちによって築かれた。それが、どこであったのかは、もはや、今となっては、だれも知らぬ。ただ、その生き証人である『移住用の宇宙船』は、地球の地下深くに隠された。そのことを知っていたのは、ごく一部の神官や国王などだけであったが、それ自体が、次第に忘れられていった。』  『すごい、お話しです。』  『現実に、ぼくらは、あの宇宙船を見てしまったからなあ。』  かめさんが、じっくりと言いました。      *************** ed358465-9ec7-42dd-ab06-184d83543adc         ********************      
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