第2回 《追放》

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第2回 《追放》

 『追放』というものは、むかしは、よくある処罰方法だったのです。  周囲が海の日本では、『島流し』ということも、よくありました。  そういえば、ナポレオンさんも、島に追放されましたね。  ところで、お月様から地球までは、近いと言えば近いのですが、だいたい38万キロほど、離れております。  時速200キロの新幹線だと、1900時間ほどで、到着します。  80日足らずですから、宇宙の中では、ほんとうに近いものなのです。  もっとも、このお話しの、うさぎさんとかめさんは、なぜか、宇宙船も必要なく、宇宙を飛べるのです。  それも、2日もかからずに、到着してしまいます。  ものすごい速度ですね。  なんで、そんなことができるのかは、ちょっと、わかりません。  かめさんは、火星の出身らしいので、もっと長く旅してきたわけなのですが、そこんところについては、かめさんは話しをしていませんでした。  月の天女様が持っていた『真実の鏡』でも、かめさんは、かめさんだったのです。  じつは、月の世界は、当時、地球よりも、ものすごく進んだ世界だったのですが、でも、裏側にあったので、地球側からは、実は、見えません。  また、火星には、もっと、ものすごい文明があったのです。  でも、月の住人たちは、なぜか、火星のことは、よく知らなかったのです。  というのも、火星の文明は、多くは地下に隠されていたからです。  さて、それで、かぐや様は、かめさんを連れて、再び地球に向かいました。  でも、今回は、期限がきまっていません。  いつの日か、お迎えが来るまで、帰ることはできません。  両方とも、肩から、多きな袋をぶら下げておりました。  当面の、食料や、飲み物や、お薬が入っております。  でも、いったい、地球のどこに行ったらよいのか、かぐや様とかめさんは、悩みました。  『さても、かぐやさま、どこに行きましょうか?』  地球の周りを回りながら、かめさんが尋ねました。  『いまは、うさぎさんでいいですよ。かぐやの名は、奪われたのですから。』  うさぎさんは、確かに、ふさぎ込んでいました。  月の裁判で、自分がいったいどんないたずらをしたのか、かめさんに、全部分かってしまったので、恥ずかしかったことも、ありました。  でも、かめさんは、そういうことは、まったく話しません。  うさぎさんは、すこしづつ、安心しました。  『地球人は、まだ、動力機関を持っていません。全部、人力です。ただ、それでも、アスカにも、自然の力を利用して、機械を作ることができる人はいましたし、大きな建物を作る技術はあります。また、石を刻む技術が進んでいます。漏刻という、水を使った時計もありました。』  かめさんが、そう、言いました。  すると、うさぎさんも、自分が見たことを、言いました。  『うん。かめさん、イズモにも、大きな建物があったのですよ。上手に、木を組んで、作っていたよ。地球の人間は、おばかさんではない。おかしな機械ばかり作っている月のひとよりも、ずっと自然と共に、生きています。自分は、このような場所の方が、心地よい。』  『ふうん。かぐやさんて、いや、うさぎさんて、意外と、哲学的なんだ。』  『まあ、失礼な、いや、かめさんや、ごめんなさい。』  『あやまらなくていいですよ。うさぎさん。いつもの、元気はどこに行ったのかな。』  『まあ、元気です。ほらね。』  うさぎさんは、急に、スピードをあげました。  かめさんは、びっくりしながら、追いかけます。  ところが、うさぎさんとかめさんは、びっくりするようなものを、見たのです。  『うさぎさん、あれは、なんだろう。でっかい、宇宙船かしら。』  そうなのです。  それは、おおかた、長さが、2キロメートルくらいはありそうな、巨大な船だったのです。  『月のものでは、ないですね。どこから来たのかな。』  うさぎさんが、思慮深く言いました。  『ううん、もしかして・・・・・・・あれは・・・・』  かめさんが、何か、言いかけましたが、途中でやめたのです。  『なんと、かめさん?』  『いやあ、旅行かな、とか、思って。はははははは。』  『ふうん。もしかして、地球の人が作ったとか。』  『ああ、そうだ。そうですよね。調べてみましょう。あいつが出てきたあたりに行ってみましょう。』  当時、地球には、ところどころに、大きな文明がありました。  でも、その宇宙船は、巨大文明の栄えているあたりではないところから、飛び出してきたようなのです。  そこで、人間の姿だと、かえって危険かもしれないと考えて、まずは、うさぎさんとかめさんの姿になって、それで最初に到着したのは、いまの、北欧あたりだったのです。  ときに、日本で、『竹取物語』が出来たのは、実は、よくわからないらしいのですが、9世紀後半から10世紀の間、位のようです。  だから、まあ、おおかた、そのあたりの北欧だったのでしょう。  ***********   🐰  🐢 ********** d84cbc29-ac17-48c6-8f18-4756384dc069 イラスト作成 『名前はまだない』さま             
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