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第25回 『夫婦喧嘩の後始末』 その3
月の王様と、お妃さまは、それぞれ、別の部屋に案内されておりました。
元ひみこさまは、敢えて、月の世界には、普通にあるような照明器具は、一切使いません。
『まあ、なんと、原始的な明かりでしょう。』
お妃さまは、多少、蔑むように言いました。
『我々が指導すれば、もっとよい生活になる。』
『はい、王妃さま。』
今回、抜擢された、お付きの女官さんは、他に言いようがありません。
しかし、何かは言わないと、まずい雰囲気がありました。
『あの、原始的な世界の体験も、それはそれで、面白いかと。』
『ほほほ。たしかに、そうね。やりたくても、できぬ体験ね。』
『飲み物や、お食事は、あたくしが、チェックいたしましてから、お口をつけますように。』
『うん。まあ、あやつが主催するならば、うかつなことはするまいが、なにか、たくらんでいるに違いない。しかし、こちらの帝がお出になるならば、失礼はなりますまい。』
『それは、そのとおり。でも、宴席での暗殺など、珍しくはないようです。まして、あやつは、魔女ですゆえ、油断はなりません。』
『まあ、そうなのでは、ありますが。あれでも、落ちぶれたとはいえ、実の姉上ではあるのです。多少の敬意は払わねば。帝のお土産は、間違いないか?』
『は。それはもう、最高の、工芸品を、用意しております。さらに。』
『王様より、良いものか?』
『さように、思います。火星燕の巣から採取した、最高級栄養食品も、付録しました。あれは、秘密の場所にしかありません。王様は、ご存じありますまい。帝は元気百倍かと。』
『むむ。そのようなもの、王には与えたくないなあ。わかってしまうぞ。』
『ま、しかたないです。』
『ふん。ときに。わが、娘は、どこに潜んでいるか。』
『ドロンに、探させておりますが、まだ、わかりません。祝宴には現れるかと。』
『まあ、慎重にはなっているであろう。謀を巡らせているに違いない。』
『はい。ときに、ドロンの報告では、地球上にある、異国の英雄が、控えているやに。』
『異国の英雄が?』
『もしかしたら、お妃さまは、顔見知りかと。』
『おー。それは、ちと、やっかいかな。』
『なぜでございますか。』
『いやあ。あの、鋳造兵士をみたであろう?』
『たしかに。手強い相手です。』
『うん。あやつらの、母上は、わが、親族にあたる。しかも、宿命のライバル。そなたは、しるまいが。もし、わが一族になにかあれば、あやつらが、王権を次ぐという、古い約束がある。守る気はないがな。一度勝てば、こちらのもの。ただ、例の宇宙船も、かの地に、無断で駐機させたしな。なにせ、この国と違って、広いゆえ。』
『さように、ございましょうとも。』
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