第27話 『夫婦喧嘩の後始末』 その5

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第27話 『夫婦喧嘩の後始末』 その5

 それは、遊園地の『コーヒーカップ』が、非常にゆっくりと回転しているようなものだったのです。  あれは、人によっては目眩を引き起こすことがありますが、これは、それほどの速度で回転するものではありません。  しかし、これだけの舞台を全部回すのは大変なことなのです。  元ひみこさまなら、様々な動力源を駆使できる訳なのですが、さすがにやりすぎはまずいです。  なので、メイン動力は、人力です。  しかし、速度の調節や、噴水や、照明との連携のスイッチングに、巨石を使ったアナログな回路を使用するならば、問題はありません。  いわゆる、『酒船石』は、その一部だったのです。  あとは、水流の管理、歯車や、滑車、心棒の細工の問題と、土木工事などです。  幸い、時の帝は、土木工事が大好きだったので、協力が得やすかったのです。  ただし、実際に労働をする人たちには、不満が溜まりやすいのは、元ひみこさまならば、知り抜いています。  支払うべきは、支払うべきと、上層部に説いて来ていましたが、多少は、民衆にマジックを見せたりして、楽しんでもらう必要もありました。  巫女という立場は、その点も便利です。  でも、やり過ぎると、悪霊扱いされるから、注意は必要だったけれど。  しかし、月から、王様とお妃さまが来るとなると、情勢は変わるだろうと思われます。  天空を、あたかも、歩いて現れる姿を演出するのは、べつに難しくはないです。  月の世界の存在は、宇宙船や、宇宙服なしで、地球と月の往復をする程度のことは、うさぎさんや、かめさんの例から見ても、しごく簡単なことだからです。  ただし、火星となると、さすがに、ちょっと遠すぎて、危ないから、宇宙船を使うのです。  距離と時間の問題なのです。  地球の、この国の都びとが、そのようすを見たら、大きな影響を遺すことでしょう。      ・・・・・・・・・・・  さて、宴が始まる少し前です。  ワイナモイネンは、異郷の都に、興味津々でした。  『ここでも、わが、深い知恵の言葉は、役に立つのだろうか? もし、襲われたら、太刀打ちできるだろうか。』  太古の偉大なる鍛冶、イルマリネンは応じました。  『言葉は、通じないだろうが、我らの造りし兵士たちが、たくさんここを守っている。襲うことはあるまい。』  『宴の支度が進んでいるから、試してみよう。』  偉大なる知恵者ワイナモイネンは、そう言いました。  しかし、イルマリネンは、こう諭したのです。  『危ないことは、するべきではない。しかし、食べ物、飲み物が、我らに合うかどうかは、分からないな。』  ワイナモイネンが、答えました。  『問題ない。わが、言葉を用いれば、毒は忽ちにして姿を現す。』  そこに、うさぎさんと、かめさんが、女官を二人率いて現れました。  『おう、月のうさぎどの。やっと、現れたかな。』  ワイナモイネンさんが、やや、からかうように言ったが、それは、親しみの現れでもあります。  『じつは、今夜、月の王さまと、お妃様がやってきます。わたしの、両親ですが、いま、ご存じの通り、二人は戦争をしています。この国の巫女さまは、もと、月の名高い科学者でした。故あって、地球に派遣され、そのまま居ついています。両親の仲立ちをして、戦争を止めさせようとしてくださっているのです。どうか、是非、ご助力ください。もし、月との交易が開けば、あなたがたも、沢山の利益を得られるでしょう。』  ワイナモイネンは、答えました。  『われは、利益より、名誉が望ましいが、イルマリネンは、利益もほしかろう。』  『もちろん、儲かれば助かる。』  『月との交易が始まれば、あなたがたは、最初の交易者として、長く称えられるでしょうし、利益も得られるでしょう。』  『まあ、うさぎさんは、命の恩人だ。お助けするのに、異存はない。』  『ありがとうございます。じつは、帝が、先に御目にかかっておきたいと申されます。ご案内いたします。』  それで、うさぎさんたちは、先にたって、案内を始めたのです。        ・・・・・・・・・・・  🍶 🍚 🐟         
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