第5回 《英雄は語る》

1/1

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ

第5回 《英雄は語る》

 ワイナモイネンさまは、傷の痛みが和らいだことから、気持ちも楽になって、知恵のうたを高らかに歌ったのです。  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  『わたしは、真実を歌おう。  大地にかけて、正しいうたを。  むかし、はるかなむかし  はるかな、天の世界から  巨大な船がやってきた。  それは、我々がみることができる  あの、星ぼしの、さらに、はるかな彼方から  やってきた。  彼らは、この天地の下に、住みかを求めた。  わが、母は、  そのことを、知っていた。  彼らが、降りてきたのを、見たのだから。  しかし、彼らは、それ以来  いちども、姿を現さなかった。  それが、昨日になって、  現れたのだ。  私は、聞いた。  彼らの声を。  『いざ、戦うべき時が来た。  まずは、あの、月を、征服せん。』  彼らは、ボホヨラの、暗き大地の底より  現れたのだ。  まもなく、月の世界から  はげしい戦いの音が、聞こえるだろう。』  『なんと、うさぎさん。いや、王女さん。それが本当なら、大変だ。あ、英雄さん、うさぎさんは、月の王女さまなんです。』  かめさんが、いいました。  『この、英雄が語るならば、嘘ではないのでしょう。しかし、かめさんと、あたくしだけでは、援軍にもならないな。』  古き英雄が言いました。  『ならば、私が、援軍を揃えよう。怪我を直してくれたお礼に、勇敢な兵士を集めよう。サンポから、たくさんの、不滅の兵を、鋳造しよう。』  『あの。さんぽ、て、なんだろうね、うさぎさん。みんなで、おさんぽかい。』 『さあ? 鋳造しよう、というからには、なにかの、製造機械ではないかな? 英雄さん。それ、なに?』  英雄が言います。  『いざ、イルマリネンに頼みに行かん。聞いてくれるかどうか。いささか、問題ではある。』    『お友達ですか? なんで、問題ではある、なんですか。か?』       『おほん、けんかしたから、だ。よくあることだ。むむ、む。』  英雄は、歌の調子から外れて、少し、タイミングが、狂ったようです。  『まあ、たしかに。あたくしも、月の世界でけんかしたから、追い出されたのですが。』  そうして、英雄が、やおら、立ち上がったのです。         🛸   2f71c626-4aeb-4f04-afac-f4a7f2ac8c30    やましんちに住みこんだウサギさん  
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加