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第9回《月の世界の危機》その2
映像に現れたのは、ぐるぐると回る、赤いガスの固まりのようなもので、これこそ、月の人たちの本体なのでした。
この時代の地球人からすると、ヒトダマとか、あるいは、後の時代なら、球雷とか、プラズマとか、言われそうです。
しかし、王様が立ち上がったのには、ほかの理由があったのです。
この《火の玉》は、月人によって、すべて違いがあるのです。
だから、仲の良い知り合い同士なら、それが誰かは、すぐ、わかります。
けれど、家族や親友以外の前で、本当の姿で、人前に現れることは、特別なとき、以外には、まず、ありません。
大体は、地球人や、地球の生き物や、なにかの形を借りているのです。
だから、国王は、そこに現れたのが、奥方さまだと、すぐに、分かったわけなのです。
『なぜ、あなたが、そこに、いるの?』
国王は、あまり、国王らしいイメージの話し方というのを、しない方です。
『ほほほほ。あなた、突然ながら、月と地球は、いただきますわ。あなたは、引退なさいませ。この、我らがいにしえの、母なる巨大移住宇宙戦艦『カトリーヌ』ちゃんと戦おうなんて、思わないでね。』
『カトリーネ、ちゃんとな? なんだそりゃ。』
『ヌ、ですよ。我らが祖先が、遥かな宇宙から、この太陽系にやって来た際に使った移住船です。長年、行方を探しておりましたが、ついに、見つけました。無敵の『武装移住船』ですよ。』
『んなもん、なんで、そこにあると、わかったの?』
『ほほほほ。な、い、しょ。さあ、降伏なさい。1時間も、差し上げましょう。またあとでね、愛するあなた。処刑なんか、されたくないでしょう。』
国王さまは、火星の衛星の、おっきいひとつで、頭をぶん殴られたような、衝撃を感じました。
冷静な大臣は、じっと、ふわふわ、風船の姿で浮かびながら、考えておりましたのですが。
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