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第1回 《月の世界》
《このお話は、すべて、フィクションです。フィンランドの民族叙事詩『カレワラ』と、日本の『たけとり物語』や、歴史的人物から、登場人物をお借りしましたが、内容は無関係です。》
【このお話が始まるまでのお話し】
〖ある日、仲良しの、月のうさぎさんと、火星出身のかめさんが、地球まで、競争をすることになりました。
ただ、わざわざ地球まで行って、どっちが早く帰るのか、だけでは面白くもなんともないので、お互いに地球で〔レジェンド〕を作り、それから帰って来ることにいたしました。
早いだけではなく、その中身も、審判の対象にしたのです。
審判は、いつも公平で、知恵の豊かな『火星うなぎさん』に頼みました。
そこで、いっしょに地球に向かって飛び立ったのですが、ちょっとした事故があり、途中で、はぐれてしまったのです。
うさぎさんは、イズモという場所で、レジェンドを作りました。(それは、やがて、ずいぶんと違うお話になってしまい、『いなばのしろうさぎ』、という伝説になりました。)
いつもは、かなりおてんばな、うさぎさんですが、なぜか、かめさんのことが心配でしょうがないうさぎさんは、それからすぐには月に帰らず、一生けん命、かめさんを探しました。
すると、かめさんは、アスカという場所に落っこちていて、そこで、レジェンドを作ったのです。(それが、『飛鳥の亀石』になったのです。)
ところが、アスカの宮殿にいた『巫女様』は、実は月の出身でした。
有名な『ひみこ』さんも、実は、その巫女様だったというのです。
そうして、うさぎさんの正体が、わかってしまいました。
うさぎさんは、実は、月の王女様である、かぐや様だったのです。
かぐやさまは、やんちゃで、おてんばで、けんかっ早く、いたずら娘として、とても有名でした。
地球に行ったのも、ちょっと、まずい、いたずらをやったから、ということも、実はあったらしいのです。
でも、仲良しの、うさぎさんとかめさんは、そういうことは、気にしないで、月の『うさぎさんとかめさん』として、肩を組んで、同時に月に帰ってきたのです。
月のうなぎさんは、うさぎさんが、かぐや様だとは、まだ知りませんでしたが……………〗
*************** 🌕
地球まで行って、新しいレジェンドを作って、それから、また、月まで帰る、というレースをやった、月のうさぎさんとかめさん。
肩を並べて楽しそうに帰ってまいりました。
困ってしまったのは、判定をまかされた、火星うなぎさんでした。
『きみたち、そういう帰りかたは、想定外だよ。それじゃ、勝負がつかないや。レジェンドの内容も、甲乙つけがたいしな。』
うさぎさんが、言いました。
『ふたりとも、新しいレジェンドを作れたし、なんだか、とっても、楽しい気分なんだ。引き分けで良いよ。』
すると、火星うなぎさんが、困惑したように答えました。
『まあ、それでよければ、そうしよう。ときに、まだ、帰ったばかりだから、聞いてないだろうけれど、あの、暴れ姫の『かぐやさん』、とうとう、月から追放になるかもしれないんだ。もっとも、いまも行方知れずさ。困ったもんだ。なんにでも、化けるから、始末が悪いんだよな。』
もちろん、火星うなぎさんは、目の前のうさぎさんが、実は、かぐやさん、だなんて、知るわけもない、はずなのでしたが…………
『あらまあ。』
うさぎさんが、あきれたように言いました。
はらはらしながら、かめさんは聞いていました。
だって、かめさんは、うさぎさんが、かぐやさんだ、と、地球の巫女さまから聞かされたばかりでしたから。
『はらあ〰️〰️〰️。それは、困ったもんだなあ。どうしたら良いのかなあ。』
かめさんは、少し、しどろもどろで言いました。
『おそらく、姫さまをたぶらかして、遊んでる悪いやつがいるにちがいない、そいつも、同罪、いや、もっと悪いやつだから、死刑にしようとか、言われているんだ。いま、月の軍隊が、月じゅうだけでなく、火星や地球や、金星も探し回っているんだよ。』
『それは、大変だ。』
かめさんは、やっと、言いました。
『で、追放のお伴に、そいつも、いっしょに付けたいと。官房長官さまが、おっしゃるんだ。まあ、裁判しないと決まらないけどね。いやね、ぼくが、ここで、きみたち、待っていたら、不思議に思われた官房長官さまから、聞かれてね。それで、事情を話したのさ。』
かめさんと、うさぎさんは、お互いの顔を見合わせました。
つまり、真面目なうなぎさんは、『これは、あやしい』、と、睨んだのでしょう。
🌗
さて、そこに、待ち構えていたのでありましょうか、『真実の鏡』を持った、『第1の月の天女』さま、が、部下を引き連れて現れました。
『第1の月の天女様』は、あの、地球にいた巫女様の、後輩にあたります。
天女様が持つ『真実の鏡』は、どのようなものに、化けていても、その正体を見破ってしまうのです。
うなぎさんが、言いました。
『ごめんね。でも、月のためなんだから。』
🌖
それで、どうなったかは、もう、すっかり明らかですよね。
王女様が被告という、前代未聞の裁判が開かれたのです。
月の王様は、『あの子の為だから。厳しくせよ。』
と、おっしゃいました。
お妃様は、ずっと、泣いておられました。
やがて、判決が出されました。
かぐやさまは、またまた、こんどは、『追放』で、地球に戻ることになりました。
一方、かめさんは、かわいそうに、『死刑』を言い渡されました。
かぐや様を、たぶらかした、というのです。
しかし、特別に、かぐや様、つまり、『うさぎさん』の監視役として、地球に同行するならば、死刑を延期し、さらに、姫さまを、まともな姫様に育て上げられれば、罪を免除して、月の王宮の兵士として召し抱えよう。
と、いう判決に、なりました。
こうして、『うさぎさんとかめさん』、いや、『かぐやさまとかめさん』は、罰として、『うさぎさんとかめさん』として、地球に送られることになったのです。
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🌝 表紙のイラストは、『名前はまだない』さまに、描いていただきました。身に余る光栄です。ありがとうございます。
続く
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