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episode.3
高橋と話している(高橋が一方的に話している)と、碧と目が合った。
気のせいかと思い、後ろを見ても、何もない。なんだろう、と不思議に思っていると、
「...っ!すいっ!彗!」
高橋が俺を呼んでいた。
『???』
「お前、どうしたんだよ。急に反応が無くなったかと思ったら、振り向いたりとか....」
そう頭に手を当て、芝居がかった口調で言う。
「あ!ついに、あの彗にも好きな人が出来たりしたか?」
....?
高橋の思考回路はいつも分からなかったが、今日は格段と分からない。
ブンブンと首を振る
「そうかそうか、照れんなよ〜。」
バシッと背中を叩かれる。
こいつの中で俺に好きな人が出来たのは確定事項らしい。
「んで?どの子だ?やっぱ星野さんか?あ、それとも同じ委員会の神宮寺さんか?」
面倒くさくなってきた
「星野さんもいいけど、神宮寺さんもいいよなぁ〜。大人しくて静かだけど、髪サラサラだし、頭いいし、何より、胸がでかい!」
俺は高橋が熱弁しているのを右から左へ聞き流していた。
きっと今の俺は死んだ魚の目をしているだろう。
すると、ダダダダッという人が走る音が聞こえ、俺の聞き馴染んだ声が聞こえた。
「すーちゃんっ!好きな人が出来たの!!??!?」
あー...やばいなぁ...
みんなの人気者の碧がこっちに来たから、たくさんの人がこっちを見ている。
なんでこいつに?みたいなかんじだ。
「誰?誰なの?ねぇ?すーちゃん?」
碧の目が怖い...。
『...あ、あお...ぃ、いない....から...っ!』
みんなの視線を感じながら、俺は必死に伝える。
空気を読んだのか読んでいないのか、高橋が
「彗、お前...話せたのか!」
と、トンチンカンなことを言っている。
別に俺は話せない訳では無い。
ただ、人と話すのが│少し《・・》苦手なだけだ。
「すーちゃん?ほんとに居ないの?」
俺はブンブンと力強く首を縦に振る。
ここで否定しておかないと、後で酷いことになるとわかっているからだ。
「じゃあいいよ。あ、あとね、すーちゃんが話すのが苦手なのは少しじゃないと思うよ〜」
いつの間にか碧が俺の後ろに回って、俺をハグして、頭を撫でながら言う。
「碧くーん?なんでそんな子の所にいるの〜?」
「早く戻って来いよー!」
星野さん達クラスの中心人物が碧を呼んでいる。
碧はそれに構わず、ブツブツと
「そんな子?すーちゃんのことをそんなとか言うんだ...。ってか俺はお前らと一緒にいたい訳じゃなくてお前らがくっついてくるだけだし....。」
なんだか怖い...。
「あ!すーちゃんごめんね?大丈夫だよ、すーちゃんは俺が守るからね!」
碧は心が読めるのか....?
少し怖く思ったが、さっきのモヤモヤはいつの間にか消えていた。
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